JAMSTEC Report of Research and Development
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原著論文
封圧下における岩石試料の比抵抗測定に関する研究
畠田 健太朗林 為人廣瀬 丈洋谷川 亘濱田 洋平多田井 修
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キーワード: 比抵抗, 封圧, 四極法
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2017 年 24 巻 p. 1-9

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Abstract

電気・電磁探査や孔内電気検層の比抵抗データを高い精度で解釈するためには,地下あるいは海底下の圧力・温度を再現した状態での掘削コア試料による比抵抗測定が必要不可欠である.本研究では圧力と比抵抗の関係について検討するため,封圧および間隙水圧を制御した状態で比抵抗測定ができるシステムを構築し,35 g/L塩化ナトリウム溶液で飽和した4種類の砂岩試料および2種類の火成岩試料について,最大80 MPaの有効拘束圧(間隙水圧:1 MPa)まで段階的に加圧したときの比抵抗を測定した.また,圧力の変化に伴う試料中の間隙水量の変化から,その孔隙状態の変化についても検討した.その結果,全ての試料で圧力の増加とともに間隙水は試料から排出され,比抵抗は上昇した.また,砂岩試料については間隙水量の変化が比抵抗の変化とほぼ一致する結果が得られ,圧力条件下における比抵抗の変化が試料の変形による孔隙率の縮小と強く関連付けられることを直接的に示すことができた.各試料における比抵抗の圧力依存性の違いについては,火成岩試料では微小クラックの存在により低圧域(~10 MPa)で比抵抗が大きく上昇することが示唆された.砂岩試料では,試料自体の変形特性や孔隙の形状などが比抵抗の変化傾向に影響した可能性がある.

1. はじめに

電気・電磁探査および孔内電気検層は,地下あるいは海底下の地層の比抵抗分布からその地質構造や地層の物理的性質(間隙率,透水率など)を推定する手段として,地球科学,応用地質学,地下資源探査など幅広い分野で用いられてきた.一方,電気・電磁探査や孔内電気検層によって得られた結果を解釈するためには,対象となる岩石・堆積物の比抵抗特性を把握する必要があり,特に地下・海底下の状態を再現した圧力・温度条件下での比抵抗測定が,これらをより高い精度で解釈するために不可欠である.

高圧あるいは高温・高圧条件下で地質試料の比抵抗測定を行った過去の研究は,地球深部(下部地殻,マントル)を対象とするものが多く(例えばBrace et al., 1965; Brace and Orange, 1968; Johnson and Manning, 1986; Scarlato et al., 2004; Parthasarathy, 2006),地下あるいは海底下数キロメートル程度の比較的低い領域の高温・高圧下における詳細な比抵抗の挙動について議論された研究例は少ない(例えばLockner and Byerlee, 1985; 林ほか, 2005).そこで本研究では,海水の塩分濃度に相当する35 g/L塩化ナトリウム(NaCl)溶液で飽和した堆積岩(米国産のBerea砂岩,白浜砂岩,多胡砂岩,インド産のRajasthan砂岩)および火成岩(庵治花崗岩,中国産の福鼎(Fuding)玄武岩)を使用し,異なる有効拘束圧(以下,圧力)条件下で比抵抗を測定することにより,地質試料の圧力に対する比抵抗特性を考察した.

2. 実験方法

2.1 比抵抗測定システム

本研究では,封圧および間隙水圧を制御した状態で比抵抗測定を行うことができるシステムを構築した(Fig. 1).本システムは,圧力容器,シリンジポンプ2台(Teledyne ISCO社製;65D,260D),LCRメーター(Agilent社製,4263B)から構成される.シリンジポンプは,1台(65D,最高圧力138 MPa)はシリコンオイルを用いて封圧の制御に,もう1台(260D,最高圧力51.7 MPa)は35 g/L NaCl溶液を用いて間隙水圧の制御に使用した.LCRメーター には(+)電圧,(-)電圧,(+)電流,(-)電流に対応する4つの端子があり,そこへ同社製ワニ口クリップリード(Agilent 16089D)を接続し,その先端に圧力容器内の試料ホルダアセンブリから取り出した導線をつなげた構造となっている.

Fig.1.

The resistivity measurement system, consisting of a pressure vessel and two syringe pumps (65D and 250D, Teledyne ISCO) for confining and pore pressure control and LCR meter (4263B, Agilent) for acquisition of resistivity data.

図1. 圧力容器と2台のシリンジポンプ(65Dおよび250D,Teledyne ISCO社製)を組み合わせた封圧・間隙水圧制御系および比抵抗データ取得を行うLCRメーター(4263B ,Agilent社製)から構成される比抵抗測定システム.

次に,本研究で作製した試料ホルダアセンブリの模式図をFig. 2に示す.岩石試料への電極の取付け方法としては一般的に二極法もしくは四極法が用いられる.畠田ほか(2015)は,間隙率の異なる試料(0.3~67%)について二極法と四極法の比較実験を行い,四極法の方が特に間隙率の高い試料(>10%)に対して二極法よりも分極の影響が少なく,広い周波数範囲(100 Hz~100 kHz)で信頼性の高い比抵抗値が得られることを示した.畠田ほか(2015)では千葉・熊田(1994)による試料と電極の配置方法を採用しており,試料の両端に電位電極を,その外側に電流電極を配置し,試料と電位電極・電位電極と電流電極の間に35 g/L NaCl溶液で飽和した濾紙を各4枚挟んだ.また,電極には120メッシュの真鍮網を用いた.本研究でも同様に試料と電極,濾紙を配置した上で,圧力容器内で測定を行うため,その外側に片側は円柱ゴムを,もう片側は絶縁性の透水板を挟んで間隙水ライン取出し用のステンレス製ピースを取付けた.さらに,全体をゴムスリーブで覆い,両端をO-リングで固定した.

Fig.2.

The sample holder assembly set in the pressure vessel. The sample, electrodes and filter papers were arranged as four-electrode method (Chiba and Kumada, 1994).

図2. 四極法(千葉・熊田,1994)による試料・電極・濾紙の配置方法を応用した試料ホルダアセンブリ(圧力容器内に設置).

2.2 比抵抗の算出方法

本研究で使用したLCRメーター(Agilent 4263B)は,周波数100 Hz~100 kHzの範囲において1mΩ ~100 MΩ の交流インピーダンスを測定することができる.

インピーダンス(Z)とは交流回路における電気抵抗であり,複素平面上のベクトル量としてFig. 3のように表すことができる.また,インピーダンスを構成する各成分は,式(1)~(5)を使用して求めることができる.

  
\[ \mathrm{Z}= \mathrm{R + jX = \vert Z\vert \angle \theta} \] (1)
  
\[ \mathrm{R}=\left| \mathrm{Z} \right|\cos\theta \] (2)
  
\[ \mathrm{X}=\left| \mathrm{Z} \right|\sin\theta \] (3)
  
\[ \mathrm{| Z|}=\sqrt {\mathrm{R}^{\mathrm{2}}+\mathrm{X}^{\mathrm{2}}} \] (4)
  
\[ \theta = \tan^{-1}(\mathrm{X} / \mathrm{R}) \] (5)

ここに,R:レジスタンス(実数成分,直流抵抗に該当),X:リアクタンス(虚数成分),j:虚数単位, \(|\mathrm{Z}|\) :インピーダンスの大きさ,\(\theta \):電流-電圧の位相差である.

Fig.3.

Principle of impedance.

図3. インピーダンスの原理.

地質試料の測定においては,レジスタンス(R)を試料の抵抗とみなし,LCRメーターから測定されるインピーダンス(\(|\mathrm{Z}|\))と位相差(\(\theta \))から式(6)を用いて比抵抗(\(\rho \))を算出する.

  
\[ \rho =\left| \mathrm{Z} \right|\cos\theta \times \text{S / L} \] (6)

ここに,S:試料の断面積,L:試料の長さである.

2.3 試料および比抵抗測定方法

本研究で用いた岩石試料およびその基礎物性データをTable 1にまとめた.間隙率および粒子密度は,各試料について実験前に浮力法を用いて測定した結果を示している.各岩石試料は直径50 mmの円柱状にコア抜きし,岩石カッターおよび平面研削盤を用いて端面が平滑で,かつ平行になるよう整形した.整形した試料はオーブンで乾燥した後(100℃,24時間以上),35 g/L NaCl溶液に浸し,真空状態で48時間以上飽和させた.

Table 1.

Samples used in this study.

表1. 本研究で使用した岩石試料.

試料をセットしたアセンブリを圧力容器内へ入れ,間隙水圧を1 MPaに保ちつつ,封圧を2 MPaから81 MPa(有効拘束圧:1~80 MPa)まで段階的に増加させながら比抵抗を測定した.各圧力条件下において,加圧直後は封圧が安定してもインピーダンス値(\(|Z|\))は変化し続け,時間の経過とともにその変化量は小さくなる.そのため,試料によって時間は異なるが,加圧後8~24時間以上経過してインピーダンス値がほぼ一定になった段階でのデータを採用した.

2.4 シリンジポンプ内溶液量から間隙水量変化の推定

本比抵抗測定システムで使用した封圧・間隙水圧制御用シリンジポンプは,それぞれポンプ内の溶液量をデータとして記録することができる.本研究では,圧力条件下における孔隙状態の変化について検討するため,封圧を変化させたときの間隙水圧制御用シリンジポンプの溶液量変化から,各試料に含まれる間隙水の変化量を推定した.このとき,シリンジポンプの溶液量変化には,加圧による濾紙からの排水や間隙水圧ラインの変形による容積の変化などを含むことから,アルミピース(直径50 mm,長さ50 mm)を用いて試料測定と同じ条件で実験を行い,その変化量(Fig. 4)をバックグラウンドとして差し引いた.

Fig.4.

Water volume change in the syringe pump for pore pressure control when applied confining pressure to an aluminum piece.

図4. アルミピースを加圧したときの間隙水圧制御用シリンジポンプの溶液量変化.

3. 結果

圧力条件下(1~80 MPa)における各試料の比抵抗値をTable 2に示す.また,各試料の圧力に対する比抵抗変化および間隙水量変化をFig. 5に示す.本研究で検討した圧力範囲においては,全ての試料で圧力の増加とともに比抵抗が上昇する傾向が見られた.各試料の特徴としては,砂岩試料の場合,低圧域においてBerea砂岩(~5 MPa)および白浜砂岩(~10 MPa)の比抵抗が大きく上昇するのに対し,Rajasthan砂岩および多胡砂岩の比抵抗変化は小さい.また,10 MPa以上の圧力下では各試料とも比較的直線的な比抵抗変化を示すが,Berea砂岩は60~80 MPaで再び比抵抗の上昇が大きくなる.最大圧(80 MPa)における各試料の比抵抗は,白浜砂岩がRajasthan砂岩よりもやや高くなるが,概ね大気圧下での間隙率に依存する結果となった(Fig. 6).火成岩試料の場合,庵治花崗岩は低圧域(~10 MPa)において比抵抗が大きく上昇し,その後は緩やかにほぼ直線的に上昇する.一方,福鼎玄武岩は低圧域における比抵抗の急上昇は見られないが,その変化量は庵治花崗岩よりも大きく,最大圧(80 MPa)において庵治花崗岩の約2倍に達する.

Table 2.

Electrical resistivity of each sample under effective pressure of 1 to 80 MPa.

表2. 圧力条件下(有効拘束圧 1~80 MPa)における各試料の比抵抗値.

Fig.5.

Resistivity (blue circle) and pore water volume (red circle) changes of examined rock samples with effective pressure increasing.

図5. 各圧力条件下における各岩石試料の比抵抗(青)および間隙水量(赤)の変化.

Fig.6.

Correlation between porosity at atmospheric pressure and measured resistivity (effective pressure of 1 MPa and 80 MPa).

図6. 初期間隙率と比抵抗(有効拘束圧1 MPaと80 MPa)の関係.

Fig. 5に示した間隙水量の変化は,1 MPaを基準(0 mL)として各圧力条件まで加圧したときの累積の変化量を表す.各試料とも圧力の増加に伴い間隙水が排出され,その排水量は圧力が低いほど多い.Rajasthan砂岩,庵治花崗岩,福鼎玄武岩は圧力の増加とともに排水量が減少し,特に福鼎玄武岩は40 MPa以上でほとんど間隙水の排出がない.一方,Berea砂岩および白浜砂岩は40 MPa以上,多胡砂岩は20 MPa以上の圧力下で排水量は比較的直線的な変化を示す.

4. 考察

4.1 孔隙の状態変化と比抵抗の関係について

前章の結果では,圧力条件下における比抵抗と加圧により試料から排出される間隙水量の関係について示した(Fig. 5).ここで,圧力による試料の孔隙状態の変化をより具体的に検討するため,試料の体積と間隙率から初期の間隙水量を求め,各圧力条件における排水量を差し引くことで試料に含まれる間隙水量の変化を見積もった.その結果,砂岩試料については圧力の増加に伴う間隙水量の変化と比抵抗変化のプロファイルがほぼ一致することが分かった(Fig. 7).これは,圧力条件下における比抵抗の変化が,試料の変形による孔隙の縮小と強く関連付けられることを示すものと考えられる.一方,火成岩試料については,計算した初期の間隙水量よりも排水量の方が多くなる,福鼎玄武岩は圧力40 MPa以上でほとんど排水しないが比抵抗は上昇し続ける,庵治花崗岩の排水量の方が多いが比抵抗は福鼎玄武岩の方が高い(Fig. 8)など,孔隙の状態と比抵抗の変化を関連付ける結果は得られなかった.間隙率の非常に小さい試料(<1%)については,今回用いた手法で間隙水量を議論することは困難であるかもしれない.

Fig.7.

Correlation between resistivity and pore water volume changes with pressure for sandstone samples.

図7. 砂岩試料における圧力に対する比抵抗と間隙水量との関係.

Fig.8.

Correlation between resistivity and drained water volume changes with pressure for igneous rock samples.

図8. 火成岩試料における圧力に対する比抵抗と排水量との関係.

圧力条件下における比抵抗と孔隙の状態変化との関連性については,過去の研究でも議論されてきた.Brace et al.(1965)は,間隙率の小さい(< 1%)結晶質岩(花崗岩,橄欖岩,珪岩,斜長岩など)について最大1 GPaの封圧条件で比抵抗を測定し,これらの比抵抗変化と体積圧縮率との関係から,約300 MPa以下の圧力では試料中の微小クラックが閉塞し,それより高い圧力では含有鉱物の弾性変形により試料中の孔隙が縮小すると考察した.Drury and Hyndman(1979)は,深海掘削(Deep Sea Drilling Project:DSDP)および陸上セクションにおいて採取された玄武岩試料を用いて最大200 MPaの封圧下で比抵抗を測定し,一部の試料で50 MPa付近まで急速に比抵抗が上昇する傾向について,掘削過程で熱的あるいは物理的なストレスにより形成された微小クラックの閉塞によるものと推定した.また,Nover et al.(2000)はプレカットした岩石(人工および天然の大理石)を用いて封圧下および三軸圧縮下で比抵抗測定を行い,封圧による試料内の亀裂の閉塞や軸圧による新たな亀裂の形成に対し,比抵抗が敏感に応答することを示した.しかし,これらは実験条件や他の物理データと比較した結果を基に,間接的に比抵抗と孔隙状態との関係を考察したものである.本研究では,孔隙状態を直接的に表す指標として間隙水量を用い,間隙率の高い砂岩試料(> 10%)については圧力に対する間隙水量と比抵抗の変化に良い相関が得られることを示した.地質試料の比抵抗はその孔隙状態と密接に関わっており,圧力条件下における孔隙状態の変化を直接観測することで,その比抵抗特性をより具体的に評価することができると考えられる.さらに,過去の研究は大部分が火成岩や間隙率の低い試料(< 1%)を対象としたものであり,間隙率の高い堆積岩類の圧力と比抵抗の関係を体系的に評価した例は見られない.本研究で得られた結果は,地下・海底下深部に広く分布する堆積岩類の比抵抗特性を明らかにし,電気・電磁探査や孔内電気検層の比抵抗データを厳密に解釈するための基礎データとして重要だと考えられる.砂岩のみでなく,泥岩や未固結~半固結堆積物などより幅広い岩相・堆積相の試料について圧力と比抵抗の関係を明らかにすることが今後の課題である.

4.2 圧力と比抵抗の関係について

本研究で行った比抵抗測定の結果から,圧力の増加に対する比抵抗の上昇傾向は試料によって異なることが示された.例えば,庵治花崗岩は低圧域(~10 MPa)において比抵抗が大きく上昇するのに対し,福鼎玄武岩は検討した圧力範囲においてほぼ直線的に比抵抗が上昇する.火成岩に関しては,地下深部で固化した後に地表へ現れるときの温度・圧力変化,あるいは掘削・採取後の圧力解放により微小クラックが形成されること,そしてこれらの微小クラックは造岩鉱物の圧縮率の差,特に石英と長石の大きな圧縮率の差から生まれる局所的な引張ひずみによって形成されることが指摘されている(Nur and Simmons, 1970; Kowallis and Wang, 1983; 加藤ほか, 1994).つまり,庵治花崗岩は試料中に微小クラックを多く含み,低圧域ではこれらの閉塞に伴い比抵抗が急速に上昇した可能性がある.

砂岩試料については,Berea砂岩・白浜砂岩が低圧域で大きく比抵抗が上昇するのに対し,Rajasthan砂岩・多胡砂岩ではその変化が小さいなど,試料によって比抵抗の圧力依存性が異なる.圧力に対する比抵抗変化の直接的な要因は試料の孔隙状態の変化であるが,Brace et al.(1965)では孔隙状態の変化と試料の変形特性(体積圧縮率など)との関係を示唆する結果が得られている.また,試料中の孔隙を閉塞させるための圧力はその形状に依存し,アスペクト比が大きい(亀裂状の)孔隙ほど低い圧力で閉塞することが示されている(Brace, 1965; Walsh, 1965).そのため,特に低圧域における比抵抗特性の違いは,孔隙の形状などが関連している可能性がある.

5. まとめ

本研究では,封圧および間隙水圧を制御した状態で比抵抗測定を行うことができるシステムを構築し,4種類の砂岩試料(Berea砂岩,白浜砂岩,多胡砂岩,Rajasthan砂岩)および2種類の火成岩試料(庵治花崗岩,福鼎玄武岩)を用いて圧力条件下(有効拘束圧:1~80 MPa,間隙水圧:1 MPa)における比抵抗変化について検討した.また,圧力に対する間隙水量の変化を基に,その孔隙状態の変化を推定した.その結果,全ての試料で圧力の増加とともに間隙水は排出され,比抵抗は上昇した.各試料の特徴としては,Berea砂岩,白浜砂岩,庵治花崗岩は低圧域(~10 MPa)において比抵抗が上大きく上昇し,Berea砂岩においては60 MPa以上でも比抵抗の大きな上昇傾向が見られた.圧力の増加に伴う試料中の間隙水量変化は,砂岩試料で比抵抗変化と良い相関が得られた.これは,加圧による比抵抗の上昇が試料中の孔隙(率)の縮小と強く関係することを示すものであり,これまで間接的に考察されてきた圧力条件下における比抵抗と孔隙状態との関連性を直接的に示すことができた.一方,火成岩試料では孔隙の状態変化と比抵抗の変化を関連付ける結果が得られず,本研究の手法で間隙率の小さい試料(< 1%)の間隙水量変化を議論するのは困難であるかもしれない.

試料による比抵抗の圧力依存性の違いについて,火成岩試料では庵治花崗岩で見られた低圧域における比抵抗の急上昇が,試料中の微小クラックの閉塞と関連する可能性を示した.砂岩試料では,その比抵抗変化(孔隙の縮小)が試料自体の変形特性や孔隙の形状などと関連する可能性があるため,今後は,水銀圧入法による細孔分布の傾向や,一軸・三軸圧縮試験による変形特性についても検討し,比抵抗変化との関係性を明らかにしたい.

謝辞

海洋研究開発機構海底資源研究開発センターの町山栄章氏には,圧力実験装置の導入にあたりご支援をいただいた.また,査読者の斎藤実篤博士(海洋研究開発機構海洋掘削科学研究開発センター)および笠谷貴史博士(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)からは本稿の内容について有益なコメントをいただいた.ここに記して感謝の意を表する.

参考文献
 
© 国立研究開発法人海洋研究開発機構
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