2018 年 27 巻 p. 47-56
海洋研究開発機構は,船舶や各種観測機器およびスーパーコンピュータを有しており,現場観測と数値シミュレーション双方から海洋地球科学の課題にアプローチすることができる.我々は,全球非静力学モデルNonhydrostatic ICosahedral Atmospheric Model(NICAM)を用いた準実時間予測計算システムを地球シミュレータ上に構築し,機構による集中観測プロジェクトにおいて実利用した.即ちインドネシアを中心とする海大陸とその周辺海域を対象とする国際キャンペーンYears of the Maritime Continent(YMC; 海大陸研究強化年)において,海洋地球研究船「みらい」による集中観測期間中(MR17-08, MR15-04),準実時間計算を実行し,現場の最新の情報や観測地点付近の気象予測情報を共有することにより,多面的な現象理解と観測の円滑な実行の一端を担った.また,「みらい」北極航海(MR17-05C)では,機動的観測の最適化を目的として,初めて極域を対象とする準実時間予測を実施した.今後,様々な緯度帯での観測との比較検証を積み重ね,予測技術の高度化に取り組む.