2017 年 66 巻 5 号 p. 570-575
症例は77歳男性。血管免疫芽球性T細胞リンパ腫の救援化学療法目的に当院に入院となった。入院前から治療に伴う好中球減少症を合併しておりlevofloxacinを予防的に内服していたが,入院2日目に39℃の発熱を認めたためcefepimeによる抗菌薬療法へ変更され,解熱した。発熱時実施された血液培養検査は嫌気ボトルのみ陽性となり,ボトル内容液のグラム染色にてグラム陰性紡錘状桿菌を認めた。48時間,嫌気条件下でのサブカルチャーにより培地上に集落の発育を認め,キットを用いた生化学的同定にてLeptotrichia buccalisと判定されたが,カタラーゼ試験等の結果が乖離していた。最終的に16S rRNA遺伝子解析により,Leptotrichia goodfellowiiと遺伝学的に同定した。Leptotrichia属は,化学療法中の血液腫瘍患者において菌血症の原因菌となり得ることが報告されている。このような易感染性宿主における血液培養陽性ボトルの塗抹所見において,大型のグラム陰性紡錘状桿菌を認めた場合は本菌も起炎菌の一つとして考慮する必要がある。またどの菌種も予後は良好で,一般的な嫌気性菌に対して用いられる抗菌薬への耐性やβ-lactamase産生株の報告もみられない。本症例においてもlevofloxacinの予防内服は無効であったが,cefepime投与により血流感染症は治癒した。