医学検査
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症例報告
孤立性に甲状腺転移をきたし,DPP IV染色陽性であった腎細胞癌の1例
小林 剛柴田 淳信広 亮輔佐々木 なおみ
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2017 年 66 巻 5 号 p. 576-581

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抄録

背景:転移性甲状腺腫瘍の頻度は低率であり,原発巣としては腎細胞癌が最も多いとされている。今回,我々は甲状腺右葉に孤立性転移をきたし,DPP IV染色陽性であった腎細胞癌の1例を経験したので報告する。症例:50歳代,女性。2009年11月に右腎癌にて右腎摘出術が施行され,淡明細胞型腎細胞癌の像であった。術後は当院泌尿器科にて経過観察していた。2014年9月,甲状腺右葉下極に約2 cm程度の孤立性結節が指摘された。穿刺吸引細胞診では異型細胞が集塊ないし孤立性に出現していた。これらの細胞の核は大小不同を示し,核クロマチンは増量し,明瞭な核小体が認められた。細胞質は比較的豊富であり,ライトグリーン好性で,顆粒状であった。DPP IV染色は陽性であった。甲状腺原発低分化癌が推定され,甲状腺右葉切除術が施行された。組織像は淡明細胞型腎細胞癌の転移像であった。結論:甲状腺腫瘍では,原発性腫瘍と転移性腫瘍の鑑別が困難な症例がしばしばみられる。DPP IV染色は分化型甲状腺癌で発現率が高く,良悪性の鑑別に有用とされている。しかし,転移性腎細胞癌においてもDPP IV染色は陽性であり,注意が必要である。

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© 2017 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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