医学検査
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技術論文
甲状腺腫瘍における遺伝子検査の有用性に関する検討
林 真也畔上 公子川崎 隆佐藤 雄一郎本間 慶一岩渕 三哉
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2019 年 68 巻 4 号 p. 699-706

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抄録

【はじめに】ATAガイドライン2015,ベセスダシステム第2版では,細胞診判定後の臨床的対応に分子生物学的検索が記載された。甲状腺腫瘍の診断過程において遺伝子検査を行うことは診断精度の向上や術前の診断確定に寄与するものと考える。今回,甲状腺腫瘍における遺伝子検査の有用性について検討したので報告する。【対象および方法】2013~2017年に当院にて甲状腺の手術が施行され,組織学的診断の確定した乳頭癌(通常型):15例,濾胞癌(好酸性細胞型を除く):15例,濾胞腺腫(好酸性細胞型を除く):5例,腺腫様甲状腺腫:5例を対象とした。FFPE切片からDNAおよびRNAを抽出し,遺伝子異常を検索した。【結果】乳頭癌では15例中13例(86.7%)に遺伝子異常(BRAF変異:12例,RET/PTC再構成:1例)を認めた。濾胞癌では15例中10例(66.7%)に遺伝子異常(RAS変異:9例,PAX8/PPARγ再構成:1例)を認めた。濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫では遺伝子異常は検出されなかった。【考察】甲状腺腫瘍において,BRAF変異,RAS変異,RET再構成,PAX8/PPARγ再構成は組織型に特異性の高い遺伝子異常である。甲状腺腫瘍においてこれらの遺伝子検査を行うことは形態診断の困難な症例において有用な情報をもたらし,診断精度の向上に寄与すると考える。

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© 2019 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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