医学検査
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本邦における病理組織検体固定手技の実態調査―日臨技精度管理調査アンケートによる報告―
東 学山下 和也石田 克成松原 真奈美林 裕司坂根 潤一鈴木 俊紀古屋 周一郎
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2020 年 69 巻 4 号 p. 660-670

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抄録

近年,コンパニオン診断やがんゲノム医療用検体の質を担保するために10%中性緩衝ホルマリン液(10% neutral buffered formalin solution; 10% NBFS)による組織固定が各ガイドラインにより推奨されている。日臨技病理検査フォトサーベイ実施時,国内における組織固定手技の統一化を目的として2015年よりアンケート調査と啓発を繰り返してきた。調査開始当初から2019年までの経年的な10% NBFS採用率は,生検検体用で38.5%(416/1,081施設)から80.0%(902/1,127施設)へと上方修正され,手術摘出検体用においても31.6%(342/1,081施設)から72.1%(805/1,116施設)へと改善された。10% NBFSの採用を拒む理由として,以前から使用していないことや固定能力が悪いことを挙げ,一方採用した施設ではコンパニオン診断への積極的対応であることが窺える。2017年の組織固定時間についての調査では,生検組織および手術摘出検体共に概ね72時間以内に固定完了しており,さらに10% NBFSによる48時間以内の固定完了を実践している施設は,生検検体で59.6%,手術摘出検体で41.9%程度に留まる。今後,病理検査の標準化として固定手技の改善を図り,患者がどの地域においても不利益の無いよう検体の質的保存に努めるべきである。

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© 2020 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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