医学検査
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原著
抗がん剤感受性試験(CD-DST)による大腸がんの予後および治療効果予測の有用性
高橋 一人齋藤 泰智小笠原 愛美中河 知里森川 知世佐藤 多嘉之下山 則彦
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2021 年 70 巻 1 号 p. 23-31

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抄録

背景:抗がん剤治療は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの開発により選択肢が増えてきているが,その効果には個人差がある。今回我々は,大腸がんの予後および治療効果予測を目的として,CD-DSTによる抗がん剤感受性試験の有用性を検証した。方法:術後化学療法を実施した大腸がん症例71例を対象にCD-DSTを行い,病期分類別に高感受性群と低感受性群の全生存期間,生存期間中央値,2年生存率,5年生存率を比較した。また,6種類の大腸がん細胞株を対象にCD-DSTによるセツキシマブの薬剤感受性評価を行った。結果:II/III期の高感受性群の全生存期間は低感受性群より延長する傾向がみられた(p = 0.162)。さらにII/III期の高感受性群と低感受性群の生存期間中央値は8.6年と2.8年,5年生存率は63.6%と28.6%となり,他の病期よりも高感受性群の予後が良好となる傾向が強かった。大腸がん細胞株を用いたセツキシマブの効果予測の検証では,KRASやBRAFの変異がないcaco-2のみが高い感受性を示した。また,FOLFOXやFOLFIRIとセツキシマブの併用によって相加的な抗腫瘍効果が認められた。結論:CD-DSTはII/III期の大腸がん症例の予後およびセツキシマブ併用化学療法の治療効果予測に有用と考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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