2022 年 71 巻 2 号 p. 307-312
たこつぼ症候群の急性期では,心電図変化が急性冠動脈症候群に類似しており,鑑別のためには冠動脈造影が必要である。今回,我々は冠動脈造影検査でたこつぼ症候群と診断された1例を経験した。生化学検査における心筋逸脱酵素およびトロポニンTの軽度上昇,経胸壁心エコー図検査における心尖部側の全周性壁運動低下および基部の過収縮,左室駆出率の低下の所見であった。また,心電図検査の経時的特徴について検討したところ初期のミラー現象を伴わない広汎な胸部誘導でのST上昇と,ST回復時のT波の陰性化が認められた。冠動脈造影ができない場合,生化学検査や経胸壁心エコー図検査とともに心電図検査の経時的な変化の経過観察がたこつぼ症候群の診断に有用であると考えられた。