医学検査
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原著
核ラミナタンパクの分布異常はLSILでの核形態異常の一因となるか
則松 良明清徳 美玖細川 翔祇󠄁園 由佳入野 了士西川 武佐賀 良子前田 宣延
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2025 年 74 巻 4 号 p. 652-661

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抄録

LSIL判定での核形態異常の原因として,HPV感染による核ラミナの分布異常が一因となる可能性を推定し,核ラミナでの免疫化学的評価を行った。対象は子宮頸部細胞診においてLSIL判定され,組織診診断CIN1であった20例とした。検討項目は,①細胞形態異常7項目(核しわ/溝,核辺縁不整,核立体不整,多核,核クロマチン粗凝集,スマッジ状クロマチン,コイロサイトーシス)の頻度。②ラミンA/C抗体を用いた免疫細胞化学染色(ICC)および免疫組織化学(IHC)での核膜ライン「有無」の頻度を調査した。その結果,①細胞形態異常所見の頻度は,しわ/溝(18.0%),辺縁不整(4.2%),立体不整(28.4%),多核(12.8%),クロマチン粗凝集(84.9%)/スマッジ(7.3%),コイロサイトーシス(42.3%)であった。核立体不整は核辺縁不整,多核,スマッジ状クロマチンと比較してそれぞれ有意に高値を示した。②ラミンA/C-ICC染色の頻度で,核膜ライン「なし」(84.8%)は「あり」(15.2%)よりも高頻度であった。ラミンA/C-IHC染色の頻度で,核膜ライン「なし」(85.3%)は「あり」(14.7%)よりも高頻度であった。以上より,核の立体不整はLSIL判定の新しい判定基準になり得る。また,HPV感染が核ラミナの異常に関与し,それが種々の核形態異常の一因になる可能性が示唆された。

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