日本看護管理学会誌
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報告
新任師長が体験する困難とその対処におけるロールモデルの様相
後藤 姉奈川島 珠実
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2010 年 14 巻 1 号 p. 68-76

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抄録

新任師長が日常の看護管理業務において,どのような困難を体験しているのか,困難を対処する際にかつての上司(師長)がどのようなロールモデルとなったか,を明らかにする目的で研究を行った.新任師長8名を対象に,半構成的面接によりデータを収集し,質的帰納的に分析した.分析の結果,新任師長が体験する日常の看護管理業務における困難として10カテゴリー【】,ロールモデルは6カテゴリー《》が明らかとなった.困難な事象と対応するロールモデルは,【患者情報が必要な看護管理業務】《患者を把握し管理に活かせる師長》,【しっくりいかない副師長との関係】《副師長と親密な交流を持つ師長》,【不十分さを感じる部下のキャリア支援】《部下の能力を活かせる師長》,【部下とのコミュニケーションの壁】《部下と良好な関係を築ける師長》,【思うままに発散できない師長としての言動】《柔軟かつ理性的な師長》,【発揮できないリーダーらしい意思表明と采配】《信念を体現し,部下を統率できる師長》であった.ロールモデルが確認されなかった困難は,【戸惑う未経験の看護管理業務】【是非を問えない昇進時の配置転換】【不明瞭な看護師と師長の業務の範疇】【昇進に伴う消極的感情】であった.複雑かつ高度な看護管理実践能力を求められる状況に困難を感じていることやリーダーシップの発揮や人間関係調整に優れた師長をロールモデルとしていることが明らかになった.実践的なスキルが獲得できるような看護管理者教育体制の整備や,ロールモデルを意識的に観察し自らの言動と対照化させる学習や,マンツーマン方式の教育体制の必要性が示唆された.

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© 2010 一般社団法人 日本看護管理学会
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