2018 年 22 巻 1 号 p. 22-29
本研究の目的は,役割移行を経験した看護職者が認識する役割移行支援について質的に探究することである.
質的記述的研究デザインにより,看護職者13名に半構造化インタビューを行い.得られたデータはKrippendorff(1989)の内容分析法を用いて質的帰納的に分析した.研究対象者は過去2年以内に上司あるいは組織から新たな役割を付与され現在も職業を継続している看護職者であり,データ収集期間は平成26年6月から9月であった.面接内容は研究協力者の同意を得てICレコーダに録音し逐語録を作成した.分析過程では内容分析の経験を有する研究者のスーパービジョンを受け,信頼性を確保した.研究は聖路加国際大学倫理審査委員会の承認(承認番号:14-007)を得て実施した.
対象者13名の陳述は,役割移行支援に関する内容195記録単位,役割移行経験に関する内容110記録単位,13文脈単位に分割できた.分析の結果,役割移行を経験した看護職者が認識する役割移行支援には,前任者が保有する有益な情報,着任した部署とそこの状況に精通する職員の配置,同僚や上司からの精神的サポート,などがあった.なかでも上司の支援は円滑な役割移行に不可欠の要素であり,役割遂行の促進要因と阻害要因の両方として機能することを認識していた.さらに,看護職者が役割移行に適応するためには,定期的な情緒的支援が必要であることが示唆された.