2020 年 16 巻 p. 27-38
本稿の目的は、フィンランドにおける「市民の育成」を担う学校のあり様と、そこで育むことが目指されている資質・能力について、教育政策と教育課程基準の分析から明らかにすることにより、北欧市民社会の担い手を育む教育の在り方を考えることにアプローチすることにある。その結果、フィンランドの「総合制学校モデル」が、時代の挑戦を受けながらも、今なお引き継がれ、重視されていること、教育課程基準が、社会の多様性を前提としていること、平等や社会的公正、民主主義といった概念を変わらず重視しつつ、新たな潮流・課題を取り込んでいることが明らかになった。さらに、日本と比較した場合の特徴として、民主主義や参加といった概念が、「行動すること」や「影響を与えること」までを含むものであることを指摘した。