2020 年 16 巻 p. 53-66
デンマークは、EUでも小国の1つである。しかしOECDによると、直近5年の平均GDP成長率は年2%程度と、先進国としては顕著に経済が拡大している。その理由の1つが、世界的に高い競争力を持つ企業を多く輩出している点である。なぜかくも小さな経済から、これほど多くの世界的企業が輩出されているのか。その国際的な競争優位は、何らかの「デンマーク的な経営モデル」によってもたらされているのだろうか。 本稿は、企業経営の特徴を国の次元で考察する意義と理論を検討し、導かれた仮説をケーススタディの手法で検証する。そこから、デンマークの主要な多国籍企業が、小国でグローバル競争のなかに翻弄されていることを、労使が政策立案者と共有していることを示す。その上で、ガバナンス、労使関係、能力構築、企業間取引において、きわめてユニークな制度を持つこと、そのような制度的な条件を比較優位として取り込む経営努力を行っていることを明らかにしたい。