動物心理学年報
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ゴキブリにおける試行間隔の自発的交替現象への影響
岩原 信九郎
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1956 年 6 巻 p. 83-86

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抄録

自発的交替現象は主として白ネズミを被検体として実験されているがそれより下等な動物についてはあまり多くの研究がない。たゞLEPLEY & RICE (3) がゾウリムシを用いて, GROSSLIGHT & TICKNOR (1) がコメゴミムシダマシTenebrio molitorの幼虫を用いてそれぞれ強制的に右または左に回転された後のT字路における自由選択が, 先の回転方向によつて影響されることを, また後の2人の研究ではこの効果が両反応間の距離に逆比例することを見出しているにすぎない。本研究では白ネズミに従来なされたと似た方法を用いて試行間隔がゴキブリの自由選択点における行動及び迷路の走行時間にどのような効果をもつかを吟味した。
ゴキブリにおける自発的交替現象が試行間隔によつて影響されるかどうかを吟味する目的で20匹の被験体を同質的な2つの群にわけ2日間1日10試行でY字路を走らせた。2つの目標箱のみ暗く従つて動因は背光趨性であつた。集中群は試行間隔が20秒, 分散群は120秒であつた。主な結果は次の通り。
1.両群合せると2日間の各日の最初の試行における選択が等しいものと異るものと同数であつた。試行間隔24時間を基準とするとこの動物には全体として特定の位置選択がないことが分つた。
2.両群間に10試行中の平均交替数において差なく, 両群の平均は3.9であつた。これは被験体に位置選択がなくまた前後する反応が互に独立であると仮定して得られる交替数の期待値4.5より小さかつたが個体差を誤差項として両者の差を検定すると統計的には有意でなかつた。この事はゴキブリにいわゆる交替現象の存在を否定することにならなかつた。
3.走行時と試行間隔との間に統計的に有意な関係は現れなかつたが, 傾向としては集中群の方がおそく反応禁止の存在を示唆した。走行時については個体差は統計的に有意であつた。

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