論文ID: NPR-D-22-00004
米国と日本の寄付市場の構造と特性を,既存研究と検索需要データを基に考察した.市場の量的な側面はSCPパラダイム,質的な側面は市場の質理論を用いて分析した.量的な面では,日本の寄付市場が米国同様に断片化した構造を持っていることが明らかになった.また,日本では災害が市場成長のドライバーとして大きな影響を与えており,日本の寄付文化はチャリティに力点があること,ベースとなる構造的寄付が未成熟であることを示した.質的な面では,高額寄付・小口寄付のいずれにおいても,寄付市場の仲介機能を充実させることが市場の質を高め,寄付の促進に資すると推測される.日本では,多様なアプローチで野心的目標に取り組むフィランソロピー的な団体がさらに参入し,他と競合しにくい新たな寄付需要を生み出すことで市場の成長に貢献すると思われる.