日本看護科学会誌
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研究報告
病院に勤務する看護職のワークライフバランスとバーンアウトとの関連
川村 晴美鈴木 英子
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2014 年 34 巻 1 号 p. 131-141

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Abstract

目的:看護職のワークライフバランス(以下,WLB)とバーンアウトの関連を明らかにする.

方法:首都圏の一般病院で国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人,会社の設置主体より各1施設選定した5病院に勤務する看護職1,030人を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.調査内容はバーンアウト(日本版MBI-HSS)22項目,属性,看護職のWLB指標調査24項目とした.

結果:有効回答は798人(有効回答率77.5%)であった.平均年齢は33.8±8.1歳でWLBとバーンアウト総合得点の平均はそれぞれ10.2, 10.9であった.WLB総合得点は,会社が国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人より有意に高かった(p<0.01).階層的重回帰分析を行った結果,実務職種,残業時間,子どもの有無,WLB認識,仕事と仕事以外の切り替え,目的を持って取り組んでいること,相談相手の有無,WLBとの有意な関連が認められた.

結論:設置主体別では,会社はWLBの実現度が高い可能性が明らかになった.また,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むこと,WLB実現度を上げることによりバーンアウトが予防できる可能性が示唆された.

Ⅰ.緒言

バーンアウトをMaslachらは「長期間にわたり人に援助する過程で,心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果,極度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群であり,卑下,仕事嫌悪,思いやりの喪失等を伴うもの」と定義している(Maslach & Jackson, 1981).現在まで,バーンアウトの研究が積み重ねられてきており,看護職のバーンアウトの要因としては,年齢,アサーティブネス(鈴木ら,2003),ソーシャルサポート(山崎,2000),職務満足(Suzuki et al., 2008),仕事の量的負担,職場の人的環境,患者との人間関係(Kitaoka-Higashiguchi & Nakagawa, 2003),コーピングスタイル(北岡,2005),などがあげられている.これらの要因を踏まえ,看護職のバーンアウトの予防への取り組みがなされつつある.

看護職の約95%は女性であり,20歳代から30歳代にかけてキャリアを確立させていく時期に結婚・出産・育児などのライフイベントと,仕事の継続を両立させることが難しい環境にある.そのため,看護職は職務における労働・責任の重荷に加え,長時間労働や夜勤の負担などで疲弊している状況である.バーンアウトは,看護者自身にとっての心身の健康問題であると同時に,患者にとっても重大な問題となり,患者の満足度(Aiken et al., 2002)や医療事故(北岡,2005)に影響を及ぼすと報告されている.

ワーク・ライフ・バランス(以下,WLB)とは,仕事と生活の調和のことをいい,近年,老若男女誰もが,仕事,家庭生活,地域生活,個人の自己啓発などさまざまな活動について自ら希望するバランスで展開できることが社会で重要視されるようになった(男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会,2007).佐藤は,WLBが実現できている状態を「会社や上司から期待されている仕事,あるいは自分自身が納得できる仕事ができ,かつ仕事以外でやりたいことや取り組まなくてはならないことができること」と定義している(佐藤,2010).すなわちWLBは,個人のライフサイクルにおける出来事(結婚,出産,育児,介護等)に配慮した総合的な職場環境を整える考えであり,WLB実現度が高い人は,仕事のやりがいが高い傾向にある(武石,2007)と報告されている.日本看護協会では,「専門職として働きがいのある労働条件の整備」と,「生活者としての適切なワーク・ライフ・バランスの実現」をビジョンに掲げ,2007年度から多様な勤務形態の導入を通じて,看護職のワーク・ライフ・バランスの実現に向けて取り組んでいる.

医療施設において,看護師などの職員がライフステージに応じて働き方を選択しながら仕事を継続することが可能となりつつある.我々はWLBに注目し,WLBの実現により精神的・身体的・社会的ストレスが軽減し,バーンアウト予防につながるのではないかと考えた.しかしWLBに視点を当てた研究は見当たらなかった.

そこで,本研究では,バーンアウト予防を意図し,首都圏における一般病院に勤務する看護職のWLBとバーンアウトの関連を明らかにすることを目的とした.

Ⅱ.本研究の概念枠組み

1.概念枠組み

本研究では,「バーンアウト」の関連要因が,個人属性,職場環境,WLBからなると考えた(図1).

図1 本研究の概念枠組み

2.用語の操作的定義

1) バーンアウト

長期間にわたり人に援助する過程で,心的エネルギーが絶えず過度に要求された結果,極度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群であり,卑下,仕事嫌悪,思いやりの喪失等を伴うもの(Maslach & Jackson, 1981).

2) WLB(ワーク・ライフ・バランス)

仕事とそれ以外の生活が自ら希望とする状態で両立できること(2007年7月,男女共同参画会議「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」).

Ⅲ.研究方法

1.調査期間

2012年6月~7月

2.調査対象と調査方法

日本医療機能評価機構による,病院機能評価の認定を受けている首都圏200床以上500床未満の一般病院78施設(東京都42件,神奈川県36件)を対象とした.そのうち,①国,②公的医療機関,③社会保険関係団体,④医療法人,⑤その他より①②東京③④神奈川⑤東京と無作為に選び,研究協力が得られるまで①国は1回,②公的医療機関は2回,③社会保険関係団体は4回,④医療法人は3回,⑤その他は6回無作為抽出を行った.看護管理者あてに口頭および文書にて調査依頼を行い,同意が得られた5つの一般病院に勤務する看護職(新卒看護師・看護師長以上の役職を除く看護師・助産師)1,030人を対象とした.また,対象病院において自記式質問紙調査とし,回収は2週間の留め置き調査を行った.

3.調査内容

1) バーンアウト(MBI-HSS)

日本版Maslach Burnout Inventory Human Services Surveyを使用した.日本版バーンアウトの尺度として使用したMBIの原版は,1981年にMaslachおよびJacksonが開発した25項目で構成された尺度で,下位尺度として①身体的疲弊感,②情緒的疲弊感と非人間化,③個人的達成感からなる.日本語版は東口ら(1998)により信頼性・妥当性が検証されている.本対象での信頼係数はクロンバックα 0.76~0.84であった.また,本研究は鈴木ら(2004)の先行研究およびLewiston et al. (1981)の提言する総合得点(身体的疲弊感の平均点+非人間化/情緒的疲弊の平均点−個人的達成感の平均点+10)により,バーンアウトを測定した.総合得点が高いほど,バーンアウトの程度が著しいことを表す.なお,本質問紙使用に際し,北岡(東口)およびMind Gardenの承認を得た(2012年5月).

2) 属性

個人属性は,性別,年齢,職種,勤務年数,職位,配偶者・子供の有無,介護の有無,職場環境では,雇用形態,勤務形態,配属先,夜勤・当直の回数,残業時間,WLBという言葉やその内容を知っているか(以下,WLB認識),有給休暇の消化日数,看護職へのコミットメント,ソーシャルサポート,仕事と仕事以外の切り替えができているか,目標を持って取り組んでいるかを尋ねた.

3) 看護職のワーク・ライフ・バランス指標調査(Nursing WLB Index)

2006年に学習院大学が,WLBに先進的な企業39社と共同研究・開発したWLB-JUKU INDEX(以下,WJI)を,日本看護協会が改変した看護職のワーク・ライフ・バランス指標調査(Nursing WLB Index: N-WLBI)で,下位尺度は「仕事と生活の評価」「経営姿勢」「仕事の管理」「人事管理」からなる24項目.回答は「そう思わない」~「そう思う」の4件法で,各項目の4段階評価を1~4と得点化され,その回答の平均値が各分野の得点となる.得点が高いほど,個人のWLBと職場環境が良好であると評価される.N-WLBI個人調査のWLB関連指標は,信頼性・妥当性は検証されている(橋本,2012).本研究では,Lewiston et al. (1981)鈴木ら(2009)の提言する総合得点算出法を参考に,(経営姿勢の平均点+仕事の管理の平均点+人事管理の平均点+仕事と生活の評価の平均点)によりWLBを測定した.本対象での信頼係数は,クロンバックα 0.91,Guttmanの折半法信頼係数は0.81であった.基準関連妥当性については「総合的にみて,仕事と生活の時間配分のバランスがとれている」という質問を作成し,この結果とWLB総合得点により検討した.なお本質問紙使用に際し,学習院大学および日本看護協会の承認を得た(2012年4月).

4.分析方法

記述統計により各変数の度数・平均値・標準偏差を算出した.対象の属性,職場環境,WLBによってバーンアウトの総合得点の平均点に差があるかを検討した.間隔尺度の変数に関しては,バーンアウトの合計得点との相関係数を算出した.有意差の検定には,t検定,一元配置分散分析およびBonferroniの多重比較を行った.

バーンアウトの関連要因を明らかにするために,バーンアウト総合得点を目的変数とし,属性,職場環境,WLB総合得点を説明変数として,階層的重回帰分析を行った.WLB総合得点に注目して,特性,職場環境による影響を調整するために第1ステップで特性を,第2ステップで職場環境を強制投入した後,第3ステップでWLB合計得点をステップワイズ法により投入し,変数選択を行った.

階層的重回帰分析にあたり,職位,配属先,自分自身の余暇や休息のための有給休暇取得,土日の連休,仕事と仕事以外の切り替えについては2値変数に変換し,夜勤の種類,WLB認識,現在の仕事に対してのやる気についてはダミー変数化を行った.具体的には職位では,「スタッフ」と「主任および主任相当職」とした.設置主体は,「会社」と「それ以外」とし,配属先は,「病棟」と「それ以外」とした.夜勤の種類は,「3交代夜勤」「2交代夜勤」とした.WLB認識は,「WLB認識(言葉は知っている)」「WLB認識(知らない)」とした.自分自身の余暇や休息のための有給休暇取得については,取得できていると,まあ取得できている者を取得「有」,あまり取得できていないと,全く取得できていない者を取得「無」とした.土日の連休はある者を「有」,ない者とその他の者は「無」とした.仕事と仕事以外の切り替えは,そう思う者と,ややそう思う者を「有」,あまりそう思わない者と,そう思わない者を「無」とした.現在の仕事に対してのやる気については,「やる気(ややそう思う)」「やる気(あまりそう思わない)」「やる気(そう思わない)」とした.さらに多重共線性を回避するために,年齢,配偶者,「やる気(ややそう思う)」「やる気(あまりそう思わない)」「やる気(そう思わない)」を説明変数から除外した.多重共線性の診断の結果,すべての変数でVIFは10以下であった.

統計解析には,統計解析ソフト(SPSS Statistic 20.0)を使用した.

5.倫理的配慮

対象施設の看護部長宛に調査依頼した.今回の研究の趣旨を文書および口頭にて説明し,研究に対する理解を求め同意を得た.対象者には配布文書にて研究の目的,方法,倫理的配慮について説明し,結果公表に際しての匿名性を保証した.また,データは統計処理し,本研究の目的以外には使用しないこと,研究終了時にすべての質問紙を破棄すること,参加・中止は自由であり,参加の拒否や,同意後の中止等による不利益は一切ないことを説明した.質問紙は封をして,設置した回収袋に入れるように依頼した.本研究計画は,国際医療福祉大学の倫理委員会の審査を受け,承認を得た(承認番号11-189).

Ⅳ.結果

回収数は891人(回収率86.5%)のうち,有効回答は年齢,バーンアウト尺度,WLB indexに欠損や重複のない者とし,798人(有効回答率77.5%)を解析の対象とした.なお,5病院の有効回答数/対象数(有効回答率)は,60%~83%であった.対象者の年齢は,30歳代が42.0%と最も高く,平均年齢は33.8±8.1歳であった.

年齢,経験年数,バーンアウト総合得点,WLB総合得点について施設による比較を,一元配置分散分析およびBonferroni多重比較にて行ったところ,設置主体が会社と医療法人はバーンアウト総合得点,WLB総合得点に有意差がみられた(表1).

表1 施設別平均(年齢・経験年数・バーンアウト総合得点・WLB 総合得点)

全体でのバーンアウト総合得点の平均は,10.9(SD±2.3)であった.対象の属性別バーンアウト総合得点平均を表2に示した.年齢・職位・経験年数・実務職種・配偶者・子どもの有無でバーンアウト傾向について有意差がみられたが,その他の変数は有意ではなかった.

表2 対象者の属性別バーンアウト総合得点平均

職場環境別バーンアウト総合得点の平均を表3に示した.雇用形態,交代制勤務,日勤専従・短時間勤務夜勤の種類,残業時間,WLB総合得点はバーンアウト傾向について有意差がみられた.WLBの言葉や内容の認識,自分自身の余暇や休息のための有給休暇取得状況,土日の連休,仕事と仕事以外の切り替え,目標を持って取り組んでいる者,仕事に対してのやる気,相談相手となりうる人では,同僚・上司・夫・恋人・習い事の先生に相談する者でバーンアウト傾向について有意差がみられた.

表3 対象者の職場環境別バーンアウト総合得点平均

バーンアウト総合得点と本研究で取り上げた連続変数との関連は,有給休暇日数以外はすべて認められた.相関が強かったものは,WLB総合得点,経営姿勢,仕事管理,人事管理,仕事と生活に関する評価であった(表4).

表4 連続変数とバーンアウト総合得点との相関係数

バーンアウト総合得点を目的変数とし,属性,職場環境,WLBのそれぞれを説明変数として,単回帰分析を行った.属性については,年齢,実務職種,経験年数,配偶者の有無,子どもの有無(p<0.01),職位(p<0.05)と有意な関連があった.職場環境では,設置主体,病床数,雇用形態,短時間勤務,夜勤回数,残業時間,WLB認識(知らない),自分自身の余暇や休息のための有給休暇取得状況,土日の連休の有無,仕事と仕事以外の切り替えができているか,仕事または仕事以外で目標を持って取り組んでいるか,現在の仕事に対してのやる気の有無と有意な関連があった(p<0.01).配属先,日勤専従,WLB認識(言葉は知っている)と有意な関連があった(p<0.05).ソーシャルサポートでは,同僚,夫(p<0.01),上司,恋人(p<0.05)と有意な関連があった.WLB総合得点,経営姿勢,仕事の管理,人事管理,仕事と生活の評価では有意な関連があった(p<0.01).

次にバーンアウト総合得点を目的変数とし,属性,職場環境,WLB総合得点を説明変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った.説明変数として投入したのは単回帰分析の結果,p<0.2のものとし,説明変数間で相関係数が0.5以上のものは,いずれか片方を除いた.階層的重回帰分析の結果,第3ステップでWLB総合得点,経営姿勢,仕事の管理,人事管理,仕事と生活の評価投入の自由度調整済み決定係数は,21~36%の説明率があった.その結果,実務職種,残業時間,子どもの有無,WLB認識,仕事と仕事以外の切り替え,目標を持って取り組んでいること,相談相手の有無(夫),WLB総合得点が有意であった(表5).

表5 バーンアウトの関連要因(階層的重回帰分析)《Step 3》

Ⅴ.考察

本研究対象者は,20歳~30歳代が全体の約78.1%であり,女性が89.7%,男性が4.4%であった.2009年に日本看護協会が全国4,815名を対象として看護職員実態調査を行った結果,20歳~30歳代が53.6%であり,女性が95.0%,男性が4.9%であった.本研究の対象は,看護職員実態調査と比較して若い年齢層であった.本研究は,離職率が全国平均より高水準である首都圏(東京都・神奈川県)の200床以上500床未満の一般病院に勤務する看護職を対象としており,若い年齢層で構成されていることが特徴ではないかと考える.

本研究では,WLB実現度は設置主体により会社が最も高く,医療法人が最も低かった.一般的に,会社が設置主体である病院は,給与や退職金,勤務時間・休日は会社の規則に準じており,福利厚生も充実している.また,企業が先駆けてWLBの支援のためにさまざまな取り組みをしており(学習院大学経済経営研究所,2008),設置主体が会社は他の設置主体と比較してWLBの実現度が高い可能性がある.しかし,今回WLBに関しては多変量解析まで行い,交絡因子を調整して,関連要因を見ていない.今後,多変量解析を行い待遇改善のための指標を得るべくWLBの関連要因を明らかにしていく必要がある.また,バーンアウトの関連要因に関して,病院も対象者の背景も,いろいろな側面の影響を調整するために最終的に多変量解析を行ったが,経験年数は残らなかった.

階層的重回帰分析の結果,自由度調整済み決定係数は0.21~0.36だった.村瀬ら(2007)は決定係数の解釈について,社会調査データにはノイズが多いので,場合によっては0.20を超えれば大きいということもある.値が0.10以下でも,モデル全体のF値が統計的に有意ならば有効な分析であるとみなすことが多いと述べている.本研究は社会調査データであり,すべてのモデル全体のF値は有意であり,自由度調整済み決定係数は0.20を超えていたため,有効な分析結果であると考える.

階層的重回帰分析の結果,仕事と仕事以外の切り替えができない者,目標を持って取り組んでいることがない者,WLB実現度が低い者ほどバーンアウト傾向が高かった.

先行研究においては,「仕事と仕事以外の切り替え」や「目標を持って取り組むこと」などの個人要因に関する研究は見当たらなかった.しかし,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むなどの前向きな取り組みは,バーンアウト予防に役立つ可能性がある.これらに関しては,他集団においてもさらなる研究を積み重ねて詳細を明らかにしていきたい.

本研究では,今まで注目されてこなかったバーンアウトとWLBとの関連を検討した.WLB実現度の低い者は,バーンアウトに陥りやすいことが明らかになった.

先行研究では,仕事の量的負担(Kitaoka-Higashiguchi & Nakagawa, 2003北岡,2005安東ら,2009),職場と関連する無力体験,医療従事者・仲間・上司からの活動期待,日常生活上でのストレスの高い出来事や苛立事などの要因が複雑に作用し,看護者のバーンアウトを左右している(稲岡ら,1986)と報告されている.

本研究におけるWLBの概念は,①経営姿勢,②仕事の管理,③人事管理,④仕事と生活の評価で構成されている.①経営姿勢とは,人に関わる組織の基本的な考え方や方針,②仕事の管理とは,上司の管理行動や組織風土,仕事の裁量についての内容,③人事管理とは,組織が行う人事管理の特徴を表しており,給与や能力開発などの内容である.④仕事と生活の評価とは,組織に対するコミットメント,キャリア・能力開発,能力発揮,仕事や生活の満足の状態である.①②③は個人を取りまく職場環境であるのに対して,④は個人のニーズである.このWLBの概念の一部である「仕事と生活の評価」のうち仕事については,Suzuki et al. (2008)が職務満足とバーンアウトの関連を明らかにしている.また,上谷(2004)は,仕事への満足度が低い者はバーンアウトしやすく,組織のシステム,すなわち「管理システム」「仕事上の人間関係」「看護部の管理のあり方」「給与」「労働条件」などは,バーンアウトに関連していると報告している.本研究では,組織に対するコミットメント,キャリア・能力開発,能力発揮,仕事や生活の満足の状態とバーンアウトとの関連が明らかになった.すなわち,WLBを構成する要因である職場環境(①経営姿勢,②仕事の管理,③人事管理)および④仕事と生活の評価(個人のニーズ)ともにバーンアウトとの関連が強く,これらが満たされるとバーンアウト予防に役立つ可能性が明らかになった.

2012年7月,改正育児・介護休業法が施行されるなど,国の政策としてWLBの実現に向けて取り組みが進んでいる.本研究において,設置主体では会社がWLBの実現度が高いことが明らかになった.しかし,WLB実現度が低い設置主体では,これからもWLBの実現度を上げるための支援が望まれる.WLBの実現は,組織の問題が大きく,教育や啓発によってある程度可能であると考える.WLBがバーンアウト予防につながる可能性が明らかになった.このことを教育に取り入れること,さまざまな設置主体にこの結果を啓発していくことが望まれる.

本研究の限界として,地域と設置主体を考慮し,対象者を選定したが,5施設に限られており,一般化するには限界がある.WLBの実現度は,看護職員から調査したものであり,WLB推進体制についても調査していく必要がある.また,横断研究であるため,因果関係については明らかにできなかった.今後は,全国での縦断調査を行っていくことが必要である.

Ⅵ.結論

設置主体別では,会社はWLBの実現度が高い可能性が明らかになった.また,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むこと,WLB実現度を上げることによりバーンアウトを予防できる可能性が示唆された.

Acknowledgment

本研究にご協力くださいました各病院の看護職員の皆様ならびに看護部の皆様に心から感謝申し上げます.

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© 2014 日本看護科学学会
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