2016 年 36 巻 p. 247-254
目的:ベナーのケアリング理論を理論的前提として,糖尿病患者の身体に根ざした知性に働きかける看護実践に関する理論枠組みを新たに構築する.
方法:糖尿病患者を対象とした質的研究論文を一次資料として用いたメタ統合を行った.分析は解釈的現象学の手法を用い,研究者間でのグループ・ディスカッションを通してテクストに埋め込まれている意味を解釈し,ケアの基盤となる意味の共通性を明らかにした.
結果:7つの論文のメタ統合の結果,順序性を持った4つのケア〈あいまいな体験に輪郭を与えるケア〉〈身体の理解を深めるケア〉〈身体への信頼感を取り戻すケア〉〈新しい対処法を身につけるケア〉が明らかになり,これらを統合して「糖尿病患者へのエンボディメントケア」と命名した.
結論:糖尿病患者へのエンボディメントケアは,身体に根ざした知性を持った存在である患者が安らぐことに向かい,身体が寛ぐことで日常生活を取り戻し,自立へと向かうことを支援する看護実践の新たな理論的枠組みとしてまとまった.