Journal of Japan Academy of Nursing Science
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Nationwide Survey Rerated to the Implementation Status of Bereavement Supports by Community General Support Centers in Japan: Characteristics of Community General Support Centers that Provided Bereavement Support
Wakanako OnoTomoko Nagai
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2021 Volume 41 Pages 363-372

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Abstract

目的:本研究では,地域包括支援センターへの質問紙調査を通して,死別サポートの実施状況,死別サポートを実施した地域包括支援センターの特徴を明らかにし,実施上の課題について考察することを目的とした.

方法:地域包括支援センターに対して郵送による全国質問紙調査を実施した.分析方法は,記述統計量算出,X2検定を用いた.

結果:質問紙の有効回答は,738人(29.5%)であった.死別に関する相談を受けたことが「ある」は,地域包括支援センター472ヵ所(64.0%)であった.X2検定の結果,死別相談を受けたことがある地域包括支援センターの特徴は,市区町村人口が多く,終末期患者のケースカンファレンスやデスカンファレンス,市民向けの看取り・死別に関する事業を実施している傾向があった.

結論:地域包括支援センターでは,死別サポートの取り組みが見られ,今後,地域の死別サポートの社会資源としても貢献する可能性が示唆された.

Translated Abstract

Objectives: We aimed to clarify the implementation status of bereavement supports in Community General Support Centers (CGSCs) and characteristics of CGSCs that provided bereavement support, to consider the issues on implementation.

Methods: Data were generated using a self-administered questionnaire sent to CGSCs throughout Japan. Descriptive statistics, Chi-square test were used to analyze the data.

Results: The valid questionnaire response was 738 (29.5%). Of those 472 (64.0%) had provided bereavement support. As a result of the Chi-square test, the CGSCs that had provided bereavement consultations were characterized by (a) a large population of municipalities, (b) provided end-of-life patient conferences and death conferences, and (c) provided bereavement services for citizens.

Conclusions: The CGSCs were providing bereavement support. Their role as a social resource for bereavement support will increase in the future.

Ⅰ. 緒言

日本の介護保険制度においては,身近な生活圏で構成される地域包括ケアシステムの中で,少子高齢社会の介護や看取りをどう支えるかが重要な課題である.遺族への調査(国立がん研究センターがん対策情報センター,2020)では,介護負担感が大きかったと感じている家族が4~5割であり,死別後に抑うつ症状がある人は1~2割,悲嘆が長引く人が2~3割と報告されていた.

先行研究では,高齢者が受ける医療・ケアの選択おいて,家族が代わって意思決定を行うこと(加藤・竹田,2017牧野ら,2018),高齢者本人の意思が不明な中での代理決定は,家族に苦悩や困難感,重責をもたらすと報告されている(牧野ら,2018).さらに,胃ろう造設等の延命治療を選択,あるいは延命治療はしない看取りを選択した家族の両者ともに,動揺や葛藤,後悔,不安等が存在する(牧野ら,2018).また,高齢者の終末期介護において,家族は,死を認識した介護のストレスを受ける(久保川・近藤,2018).これらのことから,高齢者の家族介護者には,様々な苦悩,ストレスがあり,介護・死別の経験を通して,心身の負担の増大が懸念される.

一方,高齢な介護者は,社会的孤立の割合が高まる可能性が指摘されている(永井ら,2017).社会的に孤立した高齢者は,同居者の有無にかかわらず,私的・公的なサポートを得にくく,抑うつ傾向や将来への不安が高いとされる(小林ら,2011).また,老老介護を行っている介護者は,うつの可能性が高いという報告もある(桂・萩原,2018).さらに,介護や死別の経験は,家族介護者に喪失感や葛藤,不安といったネガティブな感情を抱かせる(小野,2013).これらのことから,家族介護者が介護期間に社会的孤立に至り,死別により,抑うつ傾向や不安が増大するリスクが考えられる.

家族介護者は,要介護者が介護サービスを受けている期間には,専門職による見守りを受け,専門職に相談をする機会があるが,要介護者が死亡した後は,介護サービスが終了となり,基本的に専門職による支援はなくなる.ゆえに,家族介護者の健康の維持・増進,疾病予防の支援,死別による疾病憎悪や生活困難等のハイリスク者を見守る地域支援体制が求められる.

2006年,地域の保健医療,福祉の拠点として,全国に地域包括支援センター(以下,センターとする)が配置された.センターでは,地域住民の窓口として,介護予防,相談事業,地域ネットワークづくり等が行われている.先行研究において,センターは,ひとり暮らし高齢者の孤立死予防・看取りの支援(今野・大塚,2016),近隣も含むインフォーマル・ネットワークへの支援(高山,2010)といった地域の見守り体制づくりに関わると報告されている.また,センターは,個別支援や連携を通して,地域にあわせた社会資源を創出し(俵,20102011),多職種や他機関と協働して,在宅生活を支える体制づくりに携わる(俵,2011).さらに,訪問看護ステーションでは,センターに遺族の見守りを依頼する場合があるとの報告もあり(工藤・古瀬,2016),センターでは,個人や家族単位での遺族支援が行われる場合も考えられた.

厚生労働省(2018)の「市町村・地域包括支援センターによる家族介護者支援マニュアル」において,これまで市町村,センターが取り組んできた地域支援事業の枠組みや成果を生か活かしながら,新たな視点を追加し,家族介護者に対する相談支援に取り組む方向性が提言されている.さらに,センターは,介護者からの相談の対応や情報提供など,介護者支援事業として制度化されていない実践も含め,介護者を支援する実践の多くを実質的に担っているとの報告もある(山口,2019).

これらのことから,センターは,相談事業や見守り事業等を通して,管轄地域における死別サポートを提供する重要な役割を担っている可能性があると考えられたが,その実情は明らかにされていない.そこで本研究では,センターへの質問紙調査を通して,死別サポートの実施状況,死別サポートを実施した地域包括支援センターの特徴を明らかにし,実施上の課題について考察することを目的とした.

Ⅱ. 用語の操作的定義

1. 死別サポート

死別サポートとは,センターにおいて,社会福祉士,保健師・看護師,主任介護支援専門員が業務をする中で応対した,患者の死の前後の死別に関する個別相談やグループ支援,看取りや死別をテーマとした事業の開催などを示すものとする.

2. 死別相談

死別相談とは,センターにおいて,患者の死の前後,患者,家族,近隣の人々等から受けた死別に関する個別相談とする.

Ⅲ. 研究方法

1. 研究の手順

47都道府県ホームページのセンター名簿からリストを作成し,支所,分室を除く計5,001カ所のうち,各都道府県ごとに,無作為に半数を抽出した2,501ヵ所を質問紙の送付先とした(ホームページ名簿,2017年8月1日時点).センターの管理者宛に,質問紙調査の依頼文,質問紙,返信用封筒を各1セット送付し,1年以上勤務する社会福祉士,保健師・看護師,主任介護支援専門員のいずれか1名に質問紙の回答を依頼した.回答者には,質問紙記載後,個人で封筒に入れて無記名で返送するよう依頼した.倫理的配慮として,質問紙に調査依頼文を同封し,研究の主旨と内容,回答された質問紙の返送を研究参加の同意とすること,結果公表等を記載した.調査は,筆者の所属する聖路加国際大学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:17-A064).

2. 質問紙の構成

1) 回答者の特徴

年齢,性別,勤務形態,管理者,職種,在宅ターミナルケアやグリーフケアの学習経験の項目を設けた.また,グリーフケアの学習経験が「ある」と回答した人には,学習方法について重複回答項目を設けた.

2) センターの特徴

センターの特徴として,運営主体,所在地の市区町村人口,職員数,所在地の市区町村高齢化率の項目を設けた.

3) センターの死別サポートの実施状況

「貴センターでは,過去1年を振り返り,市民から死別に関する相談を受けたことがありましたか」という質問に対して,「ある」と回答した人には,その相談者(患者,患者の生前の家族介護者,患者の死後の家族介護者,民生委員,近隣住民),相談方法(自宅訪問,来所相談,他の機会),相談内容(終末期の在宅療養支援体制,家族介護者の介護負担,一人暮らしの人の在宅死,死別後の遺族のこと,終末期医療の意思決定)について,重複回答項目を設けた.その他,死別に関するグループ支援について重複回答項目を設け,看取り・死別をテーマとした事業の開催の実施についてたずねた.

4) 死別サポートにおける専門職の連携と学習

死別サポートにおける専門職の連携については,「過去1年を振り返り,終末期のケースカンファレンスを実施しましたか」「過去1年を振り返り,デスカンファレンス(ケースの死後の振り返り等)を実施しましたか」という項目を設け,実施の有無,実施方法等の重複回答項目を設けた.さらに,死別サポートを提供する職員に必要な学習についての重複回答項目を設けた.

3. 分析方法

変数ごとに記述統計量を算出した.また,センターの特徴7項目(運営主体,終末期のケースカンファレンスの実施,デスカンファレンスの実施,看取り・死別をテーマとした事業の開催,所在地の市区町村人口,所在地の市区町村高齢化率,職員数)と死別相談実施の有無との関連見るため,ピアソンのX2検定を行った.この際,欠損は集計から削除し(n = 674),有意水準は両側5%とした.分析は統計解析ソフトIBM SPSS statisticsバージョン27を用いた.

Ⅳ. 結果

質問紙の回収は746枚,白紙6枚,無回答が半分以上であった回答用紙2枚を除外し,有効回答は738人(送付数に対して29.5%)であった.

1. 回答者の特徴

年齢は平均46.8歳,標準偏差(standard deviation,以下,SDとする)9.4,範囲23~72,センター勤務歴平均5.4年(SD = 3.4,範囲1~12),常勤720人(97.6%),管理者320人(43.4%)であった(表1).在宅終末期ケアの学習経験が「ある」523人(70.9%),グリーフケアの学習経験が「ある」351人(47.6%)であった.

表1  回答者の特徴 n = 738
項目 内訳
年齢 平均 46.8歳(SD = 9.4,範囲23~72)
地域包括支援センター勤務歴 平均  5.4年(SD = 3.4,範囲1~12)
専門分野での勤続歴(常勤) 平均 18.2年(SD = 8.7,範囲1~43)
人数 %
性別 女性 563 76.3
男性 165 22.4
無回答 10 1.3
勤務形態 常勤 720 97.6
非常勤 12 1.6
無回答 6 0.8
管理者 管理者 320 43.4
管理者以外 405 54.9
無回答 13 1.8
職種a 主任介護支援専門員 280 38.4
社会福祉士 274 37.5
保健師 162 22.2
看護師 133 18.2
在宅終末期ケアの学習経験
ある 523 70.9
ない 210 28.5
無回答 5 0.7
グリーフケアの学習経験
ある 351 47.6
ない 380 51.5
無回答 7 0.9
あると回答した人の学習の方法b
職場外のセミナー,勉強会 255 72.6
学生時代の学校の講義 111 31.6
職場内のセミナー,勉強会 84 23.9
本などによる自己学習 84 23.9
その他 14 4.0

a 重複回答項目:職種について無回答を除いたn = 730を対象とし回答数と割合を示した.

b 重複回答項目:グリーフケアの学習経験があるn = 351を対象とし回答数と割合を示した.

SD:standard deviation,標準偏差

2. 地域包括支援センターの特徴

運営主体は委託を受けた法人572ヵ所(77.5%),市町村直営164ヵ所(22.2%)であった(表2).職員数は,1つのセンターあたり平均6.4人(SD = 3.7,範囲1~35),各職種は,社会福祉士,平均1.7人(SD = 1.2,範囲0~12),主任介護支援専門員,平均1.3人(SD = 0.8,範囲0~7),保健師,平均1.0人(SD = 1.3,範囲0~14),看護師,平均0.7人(SD = 0.8,範囲0~9)と続いた.

表2  地域包括支援センターの特徴 n = 738
項目 センター数 %
運営主体 委託を受けた法人 572 77.5
市町村直営 164 22.2
無回答 2 0.3
委託を受けた法人の設置主体a 社会福祉法人 299 52.3
医療法人 116 20.3
社会福祉協議会 110 19.2
営利法人 15 2.6
特定非営利活動法人 7 1.2
その他 25 4.4
所在地の市区町村人口 300万人~ 15 2.0
200~300万人未満 4 0.5
100~200万人未満 22 3.0
50~100万人未満 49 6.6
10~50万人未満 278 37.7
5~10万人未満 119 16.1
1~5万人未満 159 21.5
~1万人未満 86 11.7
無回答 6 0.8
職員数(1センターあたり) 平均6.4人(SD = 3.7,範囲1~35)
 社会福祉士 平均1.7人(SD = 1.2,範囲0~12)
 主任介護支援専門員 平均1.3人(SD = 0.8,範囲0~7)
 保健師 平均1.0人(SD = 1.3,範囲0~14)
 看護師 平均0.7人(SD = 0.8,範囲0~9)
 事務職 平均0.4人(SD = 0.8,範囲0~8)
 見守り専門職 平均0.1人(SD = 0.3,範囲0~2)
 その他 平均1.1人(SD = 1.5,範囲0~10)
所在地の市区町村高齢化率 平均28.5%(SD = 6.5,範囲16.0~59.0)

a 委託を受けた法人n = 572を対象とし回答数と割合を示した.

SD:standard deviation,標準偏差

3. 地域包括支援センターの死別サポートの実施状況

過去1年間に,センターで市民からの死別に関する相談を受けたことが「ある」が472ヵ所(64.0%)と6割を超えた(表3).相談を受けたことが「ある」と回答したセンターにおいて,死別サポートを行った相談者について重複回答を求めたところ,患者の生前の家族介護者335ヵ所(死別に関する相談を受けたことが「ある」と回答した472ヵ所の71.0%)が最も多く,患者201ヵ所(42.6%),患者の死後の家族介護者134ヵ所(28.4%),民生委員130ヵ所(27.5%),近隣住民75ヵ所(15.9%)と続いた.相談者別の相談方法の割合は,自宅訪問が患者83.6%(患者から相談を受けた計201ヵ所中),患者の生前の家族介護者63.9%(家族介護者から相談を受けた計335ヵ所中)と高く,来所相談は,患者の生前の家族介護者56.4%(家族介護者から相談を受けた計335ヵ所中),近隣住民53.3%(近隣住民から相談を受けた計75ヵ所中),民生委員52.3%(民生委員から相談を受けた計130ヵ所中)であった.相談内容は,終末期の在宅療養支援体制303ヵ所(死別に関する相談を受けたことが「ある」と回答した472ヵ所の64.2%),家族介護者の介護負担215ヵ所(45.6%),一人暮らしの人の在宅死175ヵ所(37.1%)と続いた.死別に関するグループ支援では,「遺族へのグループ支援は行っていない」が679ヵ所(死別に関するグループ支援の無回答を除いた728ヵ所の93.3%)であったが,遺族会を開催しているセンターが3ヵ所(0.4%)あった.看取り・死別をテーマとした事業の開催については,「実施した」158ヵ所(21.4%)であった.

表3  地域包括支援センターの死別サポートの実施状況 n = 738
項目 センター数 %
市民からの死別に関する相談(過去1年) ある 472 64.0
ない 261 35.4
無回答 5 0.7
相談者a センター数 % 相談方法b センター数 %
患者 201 42.6 自宅訪問 168 83.6
来所相談 61 30.3
他の機会 23 11.4
患者の生前の家族介護者 335 71.0 自宅訪問 214 63.9
来所相談 189 56.4
他の機会 33 9.9
患者の死後の家族介護者 134 28.4 自宅訪問 66 49.3
来所相談 63 47.0
他の機会 34 25.4
民生委員 130 27.5 自宅訪問 32 24.6
来所相談 68 52.3
他の機会 58 44.6
近隣住民(民生委員除く) 75 15.9 自宅訪問 19 25.3
来所相談 40 53.3
他の機会 33 44.0
相談内容a 終末期の在宅療養支援体制 303 64.2
家族介護者の介護負担 215 45.6
一人暮らしの人の在宅死 175 37.1
死別後の遺族のこと 167 35.4
終末期医療の意思決定 131 27.8
死別に関するグループ支援c 遺族へのグループ支援は行っていない 679 93.3
家族会に死別後も遺族が継続参加する 49 6.7
遺族会を定期的に開催している 2 0.3
遺族会を不定期に開催している 1 0.1
看取り・死別をテーマとした事業の開催 実施した 158 21.4
実施していない 575 77.9
無回答 5 0.7

a 重複回答項目:市民からの死別に関する相談があるn = 472を対象とし回答数と割合を示した.

b 重複回答項目:各相談者の人数を対象とし回答数と割合を示した.

c 重複回答項目:死別に関するグループ支援について無回答を除いたn = 728を対象とし回答数と割合を示した.

4. 死別サポートにおける専門職の連携と学習

終末期のケースカンファレンスを「実施した」346ヵ所(46.9%),デスカンファレンス(ケースの死後の振り返り等)を「実施した」が95ヵ所(12.9%)であった(表4).デスカンファレンスについては,「他機関・他施設との会を実施した」が55ヵ所(57.9%)と6割弱を占め,多職種と協働している状況があった.デスカンファレンスの内容について重複回答を求めたところ,「終末期の患者支援」55ヵ所(「実施した」と回答した95ヵ所の57.9%),「終末期の家族支援」37ヵ所(38.9%)が多かったが,「専門職の心理的負担の共有」23ヵ所(24.2%),「遺族へのグリーフケア」9ヵ所(9.5%)といった回答も見られた.

表4  死別サポートにおける専門職の連携と学習 n = 738
項目 内訳 センター数 %
終末期のケースカンファレンス 実施した 346 46.9
実施しなかった 386 52.3
無回答 6 0.8
 実施方法a センター内の職員で実施した 109 31.5
サービス担当者会議を実施した 224 64.7
他機関・他施設との会を実施した 163 47.1
デス・カンファレンス 実施した 95 12.9
実施しなかった 633 85.8
無回答 10 1.4
 実施方法b センター内の職員で実施した 43 45.3
他機関・他施設との会を実施した 55 57.9
 参加者b 介護支援専門員 48 50.5
看護師(訪問看護) 40 42.1
社会福祉士 26 27.4
訪問介護員・介護福祉士 24 25.3
医師 23 24.2
行政保健師 17 17.9
看護師(診療所) 12 12.6
薬剤師 10 10.5
栄養士 2 2.1
その他 13 13.7
 内容b 終末期の患者支援 55 57.9
終末期の家族支援 37 38.9
専門職の心理的負担の共有 23 24.2
遺族へのグリーフケア 9 9.5
死別サポートを提供する職員に必要な学習c 在宅終末期ケアにおける連携 646 88.3
家族支援/グリーフケア 569 77.7
終末期ケア/緩和ケア 527 72.0
終末期医療の意思決定の支援 501 68.4
地域コミュニティの形成 306 41.8
葬送の知識 241 32.9

a 重複回答項目:終末期カンファレンスを実施したn = 346を対象とし回答数と割合を示した.

b 重複回答項目:デス・カンファレンスを実施したn = 95を対象とし回答数と割合を示した.

c 重複回答項目:死別サポートを提供する職員に必要な学習について無回答を除いたn = 732を対象とし回答数と割合を示した.

死別サポートを提供する職員に必要な学習について重複回答を求めたところ,「在宅終末期ケアにおける連携」646ヵ所(死別サポートを提供する職員に必要な学習について無回答を除いた732ヵ所の88.3%)と最も多く,「家族支援/グリーフケア」569ヵ所(77.7%),「終末期ケア/緩和ケア」527ヵ所(72.0%),「終末期医療の意思決定の支援」501ヵ所(68.4%)と続いた.

5. 地域包括支援センターの特徴と死別相談の有無との関連

X2検定の結果(表5),有意差が見られた項目は,運営主体(X2 = 13.7, df = 1, p < .001),終末期のケースカンファレンスの実施(X2 = 64.9, df = 1, p < .001),デスカンファレンスの実施(X2 = 7.4, df = 1, p < .01),看取り・死別をテーマとした事業の開催(X2 = 12.6, df = 1, p < .001),所在地の市区町村人口(X2 = 19.6, df = 4, p < .01),所在地の市区町村高齢化率(X2 = 19.7, df = 1, p < .001),であった.

表5  地域包括支援センターの特徴と死別相談の有無との関連 n = 674
地域包括支援センターの特徴 死別相談の有無 p
ある(n = 437) なし(n = 237)
センター数 % センター数 %
運営主体 市町村から委託を受けた法人 357 81.7 164 69.2 <.001
市町村直営 80 18.3 73 30.8
終末期のケースカンファレンスの実施 実施した 258 59.0 63 26.6 <.001
実施しなかった 179 41.0 174 73.4
デスカンファレンスの実施 実施した 67 15.3 19 8.0 .007
実施しなかった 370 84.7 218 92.0
看取り・死別をテーマとした事業の開催 実施した 110 25.2 32 13.5 <.001
実施しなかった 327 74.8 205 86.5
所在地の市区町村人口 5段階 1万人未満 37 8.5 42 17.7 .001
1~5万人未満 87 19.9 59 24.9
5~10万人未満 74 16.9 37 15.6
10~50万人未満 177 40.5 80 33.8
50万人以上 62 14.2 19 8.0
所在地の市区町村高齢化率 30%未満 299 68.4 121 51.1 <.001
30%以上 138 31.6 116 48.9
職員数 6人以下 275 62.9 156 65.8 .455
7人以上 162 37.1 81 34.2

X2検定,p:漸近有意確率(両側)

Ⅴ. 考察

1. 地域包括支援センターの死別サポートの実施状況

本研究結果において,センターでは,市民の死別に関する相談を受けたことが「ある」が全体の64%であった(表3).その内,「患者の生前の家族介護者」からの相談が7割であり,「終末期の在宅療養支援体制」「家族介護者の介護負担」等の相談が見られた.また,「患者の死後の家族介護者」からの相談が28.4%であった.このことから,センターは,「自宅訪問」「来所相談」等を通して,患者の死の前後に,家族介護者に関わる状況がうかがえた.さらに,「民生委員」「近隣住民」からの相談を受けている状況が見られ,市民に対する相談窓口となり,患者・家族への支援者の相談に応じるという状況が考えられた.

センターへの死別に関する相談内容は,「終末期の在宅療養支援体制」「家族介護者の介護負担」「一人暮らしの在宅死」等があり,終末期支援を行う介護サービス事業所とは違った立場から,家族介護者や市民の相談窓口となっている可能性が考えられた.センターは,本来,総合相談業務や独居高齢者・認知症高齢者の見守りを実施しており,こうした主業務が行われる中で,本人や家族介護者,民生委員や近隣住民などが,死別に関わることになった場合,相談に応じるという状況が生じている可能性がある.また,センターによる高齢者の見守り活動等,早期からの個別支援が継続する中で,時を経て終末期となり,「終末期の在宅療養支援体制」「一人暮らしの在宅死」等,センターへの相談に応対する状況も考えられる.

地域で暮らす高齢者の見守りによって,「個別の状況に合った予防的支援」が促進されると報告されている(神崎,2013).このことから,センターの高齢者の見守り活動によって,家族介護者(遺族)の死別による悪影響をとらえる機会になり,「個別の状況に合った予防的支援」につながる可能性がある.さらに,インフォーマルな身近な人との関係やネットワーク,コミュニティの資源が組み合わされることで,終末期の患者や家族の安寧(well-being)につながるとされており(Lewis et al., 2013),センターは,終末期の患者や家族からの相談を受けた場合,重要な一つの「コミュニティの資源」として,終末期の患者や家族の安寧に貢献する可能性も示唆された.

2. 死別サポートにおける専門職の連携と学習

本研究結果において,センターは,何らかの死別サポートを提供している,または,その可能性が考えられたが,学習経験が「ない」人は,「終末期ケア」28.5%,「グリーフケア」51.5%であった(表1).このことから,センター職員は,学習経験がないまま死別サポートに関わることになる可能性が考えられた.さらに,本研究結果において,専門職の連携としては,「終末期のケースカンファレンスの実施」47%,「デスカンファレンスの実施」12.9%と十分とは言えない結果であった(表4).そのため,死別サポートにおいても地域連携を推進し,デスカンファレンスの実施や勉強会の開催等を地域で行うことも1つの方法であると考えられる.例えば,地域におけるデスカンファレンスは,専門職が看取りケアの知識を深めることや支援者同士の支えあいの場としても活用できるとされていることから(大賀,2017),地域における実践の中で学び,専門職相互にサポートしあう関係性の構築にもつながるであろう.

また,死別サポートを行う職員に必要な学習について,「在宅終末期ケアにおける連携」「家族支援/グリーフケア」「終末期ケア/緩和ケア」「終末期医療の意思決定の支援」といった項目は,有効回答数の7~9割が必要であると回答しており,センターの職員の学習ニーズとして,今後の教育を検討する必要性が考えられる.

3. 死別相談を実施している地域包括支援センターの特徴

センターの特徴に関しては,市区町村人口が多く高齢化率の低い地域が死別相談を受けている傾向が見られた(表5).この結果から,人口が多い地域では,窓口が距離的に身近にあり,高齢化率の低い地域では近隣・家族の互助機能が弱いため,センターが死別相談の役割を担うことも推察される.また,この結果において,死別相談を実施しているセンターは,患者の死の前後にカンファレンス(終末期患者のケースカンファレンス,デスカンファレンス)を実施しており,看取り・死別をテーマとした事業を開催していた.言い換えると,死別に遭遇するケースを支援して地域連携を行い,地域住民への看取り・死別をテーマにした普及啓発に積極的なセンターが,死別相談を受けている傾向があると考えられる.

さらに,遺族のグループ支援を行っていない割合は9割を超えたが,患者が亡くなった後にも「家族会に遺族が継続参加する」といった回答が6.7%であった(表3).ゆえに,家族会に継続して参加し,亡くなった患者についての思い出を語る時間を設ける等,「家族会に遺族が継続参加する」といった形をとることで,グリーフケアを提供することができる可能性も考えられた.死を見据えて見守りと看取りにかかわった住民の悲しみや罪悪感を吐露できるようなグリーフケアやメンタルヘルスケアが必要とされており(今野・大塚,2016),「家族会に遺族が継続参加する」といった形を含め,患者やその家族の生前からのなじみの場で継続的に行われるグリーフサポートの可能性が示唆された.

センターの死別サポートは,主業務として位置づけられていないものの,本研究結果から,終末期の患者や家族介護者のニーズから,それに対応している状況が見られた.終末期の患者や家族介護者のニーズに応えるコミュニティや社会をつくることは,よりよいエンドオブライフケアを提供するために必要な資源の維持を保障し,社会的な強みや見守りの環境を促進する(Lewis et al., 2013).このことから,センターの死別サポートもまた,コミュニティの重要な資源として,コミュニティの強化に貢献するものと考えられた.

Ⅵ. おわりに

本研究は,センターへの質問紙調査を実施し,死別サポートの実施状況を調べ,実施上の課題について考察することを目的とした.

過去1年間に,市民からの死別に関する相談を受けたことが「ある」センターが6割を超えた.相談者は,患者,家族,民生委員,近隣住民であった.また,センターでは,終末期のケースカンファレンス,デスカンファレンスを実施している状況があり,「在宅終末期ケアにおける連携」「家族支援/グリーフケア」「終末期ケア/緩和ケア」「終末期医療の意思決定の支援」等,職員の学習ニーズがある.さらに,死別相談を受けたことがあるセンターの特徴は,市区町村人口が多く,終末期のケースカンファレンスやデスカンファレンス,市民向けの看取り・死別の事業を実施している傾向があった.

ゆえに,センターは,主業務に関連して,患者・家族,民生委員・近隣住民の死別に関わる相談窓口になる可能性があり,地域包括ケアシステムにおけるよりよい看取りの実現,グリーフサポートの推進に向けて重要な役割を担うのではないかと考えられる.さらに,終末期の患者や家族介護者を支えるコミュニティの育成に向けて,地域における終末期ケア/グリーフケアにおける職員の学習や地域ネットワークの促進が今後の課題である.

Ⅶ. 本研究の限界と今後の課題

本調査により,センターにおいて,業務を遂行する中で,死別サポートが提供されている状況があることがわかった.しかし,センターにおける死別サポートに関わる業務内容は,これまで明確な位置づけはなく,本調査項目だけでは,十分に把握しきれていない可能性がある.また,職種による「死別サポート」業務の違いについては,明確にできておらず,今後の課題である.

謝辞:本研究の統計解析において,ご教授いただきました聖路加国際大学,米倉佑貴先生に深く感謝申し上げます.本研究はJSPS科研費JP15K11866の助成を受けたものです.

利益相反:本研究における利益相反は存在しない.

著者資格:WOは研究の着想,デザイン,データ収集,統計解析,論文作成の研究プロセスを担い,草稿を作成;TNは,研究プロセスおよび論文への助言.すべての著者は最終原稿を読み承諾した.

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