におい・かおり環境学会誌
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研究論文
ガス状トルエンの処理を対象とした新規生物脱臭装置の開発
樋口 能士上原 真哉杉山 仁一
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2006 年 37 巻 2 号 p. 110-121

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抄録

ガス状VOC(揮発性有機化合物)の生物処理法(生物脱臭法)の性能強化と安定性向上を目的に,新規装置である「充填塔連結流路可変型生物脱臭装置」を提案し,トルエンを処理対象とした基礎的実験を行った.実験では,PVF担体(ポリビニルホルマール担体)充填層を3層直列で接続し,ガス流路,すなわち3充填層への通気順序を一定時間間隔で切り替え,ガス流路切換時には充填層を洗浄して,提案した装置の運転条件を再現した.実験の結果,洗浄に用いる無機栄養塩溶液の窒素成分の増加でトルエン除去速度が向上し,また,充填担体の至適含水率は60%程度であった.一方で,実験で用いた充填担体では,洗浄液の流れによる物理的な洗浄力のみで過剰な菌体蓄積を排除できず,菌体の制御には薬液洗浄が有効である可能性が示唆された.また,平均気孔径2.0mm, 気孔率96%の新たな透過性PVF担体を開発して使用した結果,最適操作条件の下では,200ppmvまでのトルエン濃度に対して1次反応による処理が観察された.さらに,新規PVF担体では40~80%の広い含水率範囲で最大値に近いトルエン除去性能が維持された.本実験の平均的な条件で得られたトルエン除去に関する1次反応速度係数(収着速度係数)は約0.05sec-1,トルエン流入濃度200ppmvの環境下でのトルエン除去速度は140~200gm-3h-1の範囲であった.

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© 2006 (社)におい・かおり環境協会
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