2007 年 38 巻 5 号 p. 375-382
食感性工学は消費者の食嗜好を定量化する手法・技術・システムなどを考究する新しい科学技術の分野として提唱されている.日本語の「感性」は多様に解釈されているため,欧米の諸言語には正確に対応する言葉が存在しない.したがって,「kansei」が欧米の言語として認知されることを提案している.また,消費者個人に「おいしさ」が生起するメカニズムを記述するために開発された「食感性モデル」は,新食品製品の設計,加工条件の最適化および販売戦略などに応用されている.本稿では,このモデルに基づき,緑茶飲料の成分分析データと社会属性の異なる消費者の官能評価スコアを利用した香味設計法およびペットボトルを介した製品情報が香味の「おいしさ」評価に及ぼす影響を明らかにし,ヒット商品の創生に貢献した事例を紹介する.