本稿では,ニオイの心理学に関する研究の進展についてまとめた.BuckとAxelのノーベル賞受賞前後にニオイに関する心理学的な研究は飛躍的に増大した.しかしながら,これらの研究は必ずしも嗅覚レセプターに関する知見と一致するものではなく,むしろ嗅覚レセプターの機能とヒトのニオイの感覚とは無関係であることを強調する方向に向かっているようである.本稿では,これらの心理学的な知見とにおい・かおり環境との関連性を中心にまとめ,我々が嗅覚レセプターに関する知見と合わせて,最終的にどのようにニオイの感覚を理解しようとしているかについて報告する.