におい・かおり環境学会誌
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特集 (食品の異臭 Part II)
食品の異臭苦情について—日本生協連に寄せられる異臭苦情の状況と取り組み—
氏田 勝三
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キーワード: 異臭, 苦情, 食品, 消費者, 生協
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2010 年 41 巻 6 号 p. 372-383

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抄録

近年,食品の異臭苦情が増加してきている.背景には,この10年間に発生した食品に関わる多くの事件・事故の存在があると考えられる.消費者にとっての食品の異臭は,その食品についての各人の「潜在的な基準」から逸脱した「におい」であると言える.一方,食品の異臭にはその由来から,「食品変敗」「配合・工程不良」「包材由来」というその食品の商品仕様内の事項に起因する「内的要因」によるものと,「製造資材誤使用」「付着・混入」「臭い移り*1」という商品仕様外の事項に起因する「外的要因」によるものがあると考えられる.異臭苦情が寄せられた場合,食品を取り扱う事業者が取るべき措置は,第一に消費者が異臭をどのように感じて表現しているかを理解し,迅速にその不安や疑問にこたえることであり,次にその異臭苦情から判った事項を商品改善に生かしていくことである.そのために,苦情発生履歴と製造工程記録を確認するとともに,異臭原因として予想される外的,内的要因について嗅覚官能検査と機器分析の結果から検討し原因を究明する.
本稿では,日本生活協同組合連合会(日本生協連)のコープ商品*2にこれまで寄せられてきた異臭苦情の状況とそれに対する取組事例の一部を紹介する.組合員に食品を供給する事業者として,生協には,安全と品質の確保に最善を尽くす事はもとより,食品の特性について日頃からきめ細かな情報を消費者に伝えていく努力が不可欠である.特に,嗅覚や「におい」という,人により感じ方が異なる要素をもつ異臭については,その必要性が強く求められる.また,今日「におい」そのものについての情報提供が社会的にも求められてきていると考える.

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© 2010 (社)におい・かおり環境協会
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