本研究では,IH調理時に,換気量削減のためレンジフードによる局所排気をしない場合の臭気対策として調湿建材に着目し,実物大空間における調湿建材の脱臭性能を明らかにすることを目的とした.LDKを想定した実験室(3640mm×7280mm×2500mm,換気回数0.5回/h)でIHによる調理を行い,調湿建材(主成分 : 多孔質珪酸化合物)を設置したときの脱臭性能を嗅覚測定とにおいセンサーを用いて評価した.調理直後の臭気濃度を基に,実験室の壁・天井をガラスとしレンジフードを全く運転しない条件に対する各条件の低減率を脱臭率として求め,脱臭性能を比較した.実験室の天井に調湿建材を設置した条件では脱臭率69%であり,調理中15分間のみのレンジフード運転条件では脱臭率90%であった.調湿建材の調理直後の脱臭率は15分間運転のレンジフードよりも劣るが,調湿建材は室内へ残留した臭気の脱臭に有効であり,調理前の臭気濃度までに回復する時間は,調理中15分間のレンジフード運転条件よりも短くなることが明らかとなった.