2011 年 42 巻 5 号 p. 354-360
においに対するヒトの感覚強度は,加齢とともに変化することが確認されており,高齢者では徐々に感度が低下する.一方,においの質の違いを嗅ぎ分けるような識別力は,においの種類によって結果に違いが生じる.例えば,食品は身近で日常的に慣れ親しんでいるものであり,そのにおいとそうでないにおいとでは,馴染みのあるにおいのほうが識別率は高い.また,においに対する嗜好には,生活環境や習慣が関与する.ここでは,においに対する識別や嗜好の様子から,においがヒトの認知機能にどのような関わり方をしているのか考えてみたい.