におい・かおり環境学会誌
Online ISSN : 1349-7847
Print ISSN : 1348-2904
ISSN-L : 1348-2904
研究論文
キャピラリーカラムを用いたGC/MSによる豚糞から発生する硫化水素,メチルメルカプタン,トリメチルアミンおよび低級脂肪酸の分析
松原 英隆今村 弥生内山 幸子
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 46 巻 3 号 p. 218-228

詳細
抄録

豚糞からは,硫化水素(H2S)やメチルメルカプタン(MM),トリメチルアミン(TMA)および低級脂肪酸類(LMFAs)といった悪臭物質が放出される.従来,これらの悪臭物質のガスクロマトグフィーによる分離にはパックドカラムが使用されてきた.また,H2SとMMの検出にはFPDが利用され,TMAとLMFAsの検出にはFIDが利用されてきた.しかし,パックドカラムはピーク分離能が低く,FPDやFIDは検出器としての分解能が低いため,低濃度の悪臭物質の測定では妨害ピークの影響を受け易かった.以上の問題を解決するため,本研究では,ピーク分離能が高いキャピラリーカラムと検出器としての分解能が高いMS検出器を用いる悪臭物質分析法を開発した.

H2S,MMおよびTMAは液体アルゴンで低温濃縮後,GC/MSで測定した.また,LMFAsは,アセトン吸収後,脱水濃縮しGC/MSで測定した.定量下限値は,いずれの悪臭物質に対しても豚小屋の敷地境界基準値以下になることが分かった.

pH中性の無処理の豚糞から悪臭物質を発生させたモデル実験では,MMとTMAは検出されたが,酸性物質であるH2SとLMFAsは検出されなかった.ところが,豚糞をリン酸で酸性にしたところH2SとLMFAsも検出されるようになった.以上の検討から,悪臭物質に関する分析および調査研究への本分析法の有用性が示された.

著者関連情報
© 2019 (社)におい・かおり環境協会
前の記事 次の記事
feedback
Top