におい・かおり環境学会誌
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研究論文
熱傷患者から放散されるアンモニアの臨床応用に関する研究
木村 桂大関根 嘉香梅澤 和夫古川 翔太高橋 未奈美浅井 さとみ宮地 勇人塚本 隆史小座野 貴弘
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2016 年 47 巻 6 号 p. 421-429

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抄録

近年の機器分析法の発展に伴い,ヒトの体臭が数多くの揮発性有機および無機化合物から構成され,その成分の種類や量が疾病や身体的・生理的状態に関連することがわかってきた.そこで本研究では,長期入院中の重度熱傷患者の体表面から放散するアンモニアに着目し,熱傷の治癒の程度を室内空気中アンモニア濃度のモニタリングにより,客観的に診断する方法の開発を検討した.臨床試験は火炎による重度熱傷患者4名を対象とし,集中治療室の室内空気中濃度をパッシブ・サンプラー法により測定した.測定地点は数値流体解析によるシミュレーション結果を基に定めた.測定した結果,室内空気中アンモニア濃度は入院中に大きく変動し,創部デブリードマンおよび皮膚移植時に増加し,創閉鎖時にバックグラウンドレベルに減少,創閉鎖せず患者が死に至った場合には高濃度を維持する傾向が見られた.このことから,熱傷患者の治癒程度を室内空気中アンモニア濃度のモニタリングによって観察できる可能性が見いだされた.

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© 2016 (社)におい・かおり環境協会
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