本研究は、排便において不適切な弁別刺激に対して強固な刺激性制御が確立していた自閉症児に対して、刺激性制御の転移を標的とした排便訓練を実施した事例の報告である。機能的アセスメントの結果、排便の弁別刺激としてパンツの感触や床に跪いて便器に寄り掛かる姿勢が機能していると思われた。そして、適切な弁別刺激に移行するための手続きとして、浣腸を用いた行動的介入を実施した。介入の結果、4週間かけて家庭内でパンツを履かないで便器に排便できるようになった。1年後も維持され、自発的な排便や家庭以外での排便も可能になった。考察では、本実践で用いた手続きに対する支援者の意思決定に関して、適正手続きの選択の観点から検討した。