2020 年 17 巻 2 号 p. 41-49
本研究では、就労継続支援B 型事業所(以下、「事業所」)において行動コンサルテーションを実施した。対象は、他者に業務と無関係な不適切発言をすることで本人のみならず他利用者の業務遂行にも支障をきたしていたASD 成人であるA さんと事業所に通所する利用者全体の支援を担当する職員4 名であった。ベースライン期において、A さんの不適切発言は1 日あたり平均約11 回観察されていた。これに対して介入期では、職員らに①A さんの不適切発言に対応してしまうのではなく、業務遂行を促す声かけを行うか聞こえないふりをする、さらに、②A さんの適切な業務遂行行動に対して言語称賛を提示する、以上2 点を提案した。その結果、介入期以降、職員の適切な対応の割合が大幅に増加し、それに呼応して、A さんの不適切発言は半減した。そして、フォローアップ期においてもこの傾向は維持した。このことから今回の行動コンサルテーションは一定の効果を示したと言える。しかしながら、外部のコンサルタントによる直接観察に対する職員の抵抗感やコンサルティ各々が抱く課題意識への配慮において留意が必要な課題が示され、福祉施設の現状にも適合した行動コンサルテーションおよびコンサルティが複数名参画することを念頭に置いた支援環境整備の更なる実践の蓄積と検討も必要であることが示唆された。