日本女子体育連盟学術研究
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実践研究
幼児と母親への「もの」を使った身体表現の実践的研究
髙野 牧子
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2018 年 34 巻 p. 31-38

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抄録

「もの」(小道具)によってどのような身体表現を母親と子どもから引き出せるのかを明らかにし,環境構成として提供する際に期待できる効果を検討することを研究目的とする。対象は2歳児とその保護者であり,月1回の創造的身体表現の連続講座を実践した。「もの」の素材は,1 )新聞紙 2 )緩衝材によるエアマット(プチプチ緩衝材)3 )ムーブメント・スカーフ4 )光と映像5 )伸縮布6 )フープの6種類とした。活動中に引き出された動きを分析するとともに,各活動後,母親が自己評価と子どもについて評価し,自由記述を行った。評価項目は,①楽しく踊る ②真似して動いた ③からだで表そうとした ④子どもや他の参加者と 一緒に活動した ⑤意欲的に参加した ⑥活動に満足した という6項目について5件法で評価した。

その結果,新聞紙は上肢の動きが多く,エアマットは下肢を中心とした動きが多い。光と映像は,身体部位を意識させ,伸縮布は全身のバランス感覚を養う動きが多い。ムーブメント・スカーフとフープは見立ててなりきる模倣的な動きが引き出された。

さらに母親による評価では,新聞紙は母親の意欲,満足度が高かった。エアマットは,子どもの評価が高く,母親との相関係数も高い。スカーフは,母親が楽しく踊ったという項目について,最も高い評価を示した。光と映像は,標準偏差が大きく,評価のばらつきが目立った。また,伸縮布は,それを楽しむ子どもと怖がる子どもで評価が分かれた。フープは,子どもの満足度が最も高い結果となった。

以上より,素材によって子どもと母親の評価が異なり,身体表現の引き出され方も違う。多様な表現を引き出すために,意図して素材を組み合わせ,年間を通して多様な動きが経験できるよう計画し,目的に応じて,援助の工夫が必要であると結論づける。

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© 2018 公益社団法人 日本女子体育連盟
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