日本女子体育連盟学術研究
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原著論文
幼児の創造的な身体表現を育むための保育者の役割
―ドイツ,バイエルン州森の幼稚園の事例を基に―
髙野 牧子
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2023 年 39 巻 p. 1-8

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抄録

本研究の目的は,幼児の創造的な身体表現を育むための保育者の役割について明らかにすることであり,ドイツ,バイエルン州の森の幼稚園の事例を基に検証した。研究方法は,州が定める幼児教育計画に関する文献研究,実際の保育現場での参与観察調査,指導者へのインタビュー調査の3 点である。その結果,バイエルン州幼児教育計画(Der Bayerische Bildungs- und Erziehungsplan für Kinder in Tageseinrichtungen bis zur Einschulung. )で,ダンス教育での保育者の役割は「アイデアを引き出すサポート」をし,「子どもたちの多様なアイデアをまとめていく役割」であることが明記され,さらには「動きや流れが決まった踊りは出来れば避けた方がいい」と記され,保育者主導の振付指導を否定し,子どもが主体となり,自由に表現を生み出す方向性を具体的に明示していた。参与観察した園はシュタイナー教育を基本とした森の幼稚園で,音楽で日常の保育を展開していた。インタビューで「保育者が想像力豊かだと,子どもたちもそれに刺激され,さらに自分の動きを想像したり,自分たちで動きを作り出したりできる」と語り,朝の会では応答的保育の中で保育者が率先して子どもの発言を身体表現で即興的に表し,子どもたちは模倣しながら自分なりに表現する活動を行っていた。幼児の創造的な身体表現を育むための保育者の役割は,保育者自らが表現者となり,その存在そのものが子どもたちへの刺激となり,子どものアイデアを引き出し,創造性を育んでいくことであると結論づける。

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