日本精神保健看護学会誌
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精神科急性期病棟における暴力の危険性の察知と看護師の臨床判断
馬場 香織
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2007 年 16 巻 1 号 p. 12-22

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抄録

精神科急性期病棟において、看護師が患者からの暴力の危険性をどのように察知し対応しているか、そのプロセスを分析し精神科看護師の行う臨床判断を検討した。方法として、精神科急性期病棟経験5年以上の看護師9名に半構成的面接を行い、1場面毎に質的に分析した。また、病棟で参加観察を実施した。12場面の分析の結果、場面の特徴として「関わりの中で暴力が起こりそうになったが暴力を予防できた場面」「関わりの中で暴力が起こった場面」「すでに暴力は起こっていたが暴力は治まった場面」「すでに暴力が起こっておりさらに暴力が拡大した場面」の4つが明らかになった。看護師は暴力の危険性を察知する際、【観察によって把握した患者の状態1を捉え、【観察によって把握した状態とこれまでの患者の状態との比較1を行っていた。さらに【場面前までの看護師と患者の関係性】【看護師個人の経験や考え】【他の患者の存在】【医療体制】という手がかりも用いていた。臨床判断のプロセスの特徴として、看護師は、患者の安全と看護師の安全、さらに周囲の患者の安全を優先し、集めた<手がかり>を用いて対応を選択していた。一方で、場面前までの患者との関係性が<判断>や、対応の<評価>にも影響していた。暴力の予防と最小化の為に、個々の看護師が看護師自身もしくは患者が暴力を受ける可能性を察知した上で、患者と看護師の安全を考慮した判断を行う能力が求められる。

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© 2007 一般社団法人日本精神保健看護学会
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