2009 年 18 巻 1 号 p. 10-19
【目的】薬物依存症者への看護の実践経験を有する看護師にインタビューを行い、看護の体験を描き出し、薬物依存症者への看護の意味を明らかにする。【方法】半構造化インタビューによる質的研究。インタビュー期間:2003年7月〜9月。参加者:12名。質問:(1)看護に関連する印象的な出来事、(2)その出来事への思いなど。インタビュー総時間:700分。【結果及び考察】看護師と薬物依存症者の感情には「無意識の対称性」がみられた。看護師は、薬物依存症者に「巻き込まれない」「負けない」ように看護を継続するも、薬物をやめさせることは困難だった。看護の限界や無力に気づいた看護師は、葛藤しながらも、患者との対話を大事したコラボレイティヴな関係を築いていった。看護の限界や無力に気づくことは、看護の質の変化へのターニングとなっていた。また、薬物依存症者への看護には、患者とのコラボレイティヴな関係を通して、患者と看護師の相互成長がもたらされるという意味があると考えられた。