2013 年 22 巻 1 号 p. 49-58
本研究では,急性期統合失調症患者を対象に,症状自己管理に焦点をあてた心理教育プログラムを実施し,症状対処行動に関する自己効力感向上についての効果の検討を目的とした.統合失調症患者17人に,1クール2週間,4回セッションで構成されたプログラムを作成・実施した.セッションでは,再発の注意サインやストレス対処など,症状自己管理に関する情報提供を行い,参加者同士で互いの経験やアイディアを語ってもらった.分析は,自己効力感尺度(SECL)および陽性陰性症状評価尺度(PANSS)を用い,Wilcoxonの符号付順位検定にて,実施前後で効果を比較検討した.その結果,プログラム後に,症状対処行動得点は有意な上昇が見られなかったが,自己効力感尺度の総得点は有意に上昇し,また,精神症状は有意に改善した(p<.05).参加者は必要とする情報が得られたことに加え,他者との相互作用から,成功体験や不安の軽減がなされ,自己効力感向上につなかったと考えられる.このことから,本プログラムが,患者の自己効力感向上を目指す一技法として有用であることが示唆された.