日本精神保健看護学会誌
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アルコール依存症医療に従事するコメディカルスタッフが陰性感情への対処からやりがいを獲得するプロセス
片山 太郎槇 健吾山下 亜矢子渡邉 久美
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2015 年 24 巻 1 号 p. 59-67

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抄録

本研究の目的は,アルコール依存症医療に従事するコメディカルスタッフが,自己の陰性感情に対処し,依存症医療にやりがいを獲得していくプロセスを明らかにすることである.半構造化面接を対象者13名に行い,M-GTAを用いて分析を行った結果,4カテゴリーと16概念が抽出された.初期においては《理不尽な要求に対する怒りと無力感》を抱いていたが,同時に対象理解に向けた取り組みを行うなかで,依存症という病気の知的理解からその人の体験世界を情緒的に理解していく《病状理解の深化》を行っていた.症状とその人の内的体験を結びつけた理解が,陰性感情の肯定的な対処を可能としており,回復を見据えた《治療的なアプローチの実践》へとつなげていた.これらの関わりのなかで,依存症から回復していく患者に接し,《アルコール依存症医療へのやりがいと喜び》に至っていた.陰性感情への対処においては,何よりもその要因となる症状を,背景を含めた全人的理解につなげていけるよう,組織的支援体制の確立が必要であることが示唆された.

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© 2015 一般社団法人日本精神保健看護学会
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