1970 年 35 巻 7 号 p. 394-399
コンピュータの急速な進歩に伴ない,従来解くことが難しかった,かなり複雑な油層工学の問題も最近解けるようになって来た。その半面,不十分な条件の下で,解の一意性も保証されない問題を機械的にコンピュータにかける恐れも出て来た。
筆者はさきに水•油の2領域が1枚の境界面ではっきり分かれ,したがって飽和率が境界面のところで不連続に変わる2相流の境界値問題の解の一意性について述べた2)3)。
しかし境界面のところで流線が屈折する,いわゆる"屈折条件"をコンピュータにかけるのはかなり面倒と思われる。これに反し,幅をもった境界領域を通して,飽和率が連続的に変化する場合は,屈折条件は単に"連統性"におきかえられるので,困難は回避できる。もっとも,そのかわりに未知量として従来の圧力分布のほか飽和率分布も加わるが,この面の困難はたとえばADIP (Alternating Direction Implicit Procedure)のような方法で克服できる。
そこで筆者は手初めに非圧縮流体について,飽和率が連続的に変わる2相流の境界値問題の解が一意的に決まるための条件を調べて見た。結果は以前のものと合わせて§4で比較表示される。