教授学習心理学研究
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「誤前提課題」を評価課題として用いた教授学習実験の概観と展望
工藤 与志文
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2008 年 4 巻 1 号 p. 40-49

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抄録
「誤前提課題」とは,学習材料の内容と矛盾する誤った前提にもとつく質問に対して答えるよう,学習者に求める形式の課題である。この課題に正答するためには,学習者は質問に直接答えるのではなく,質問の前提が誤りであることを指摘できなければならない。これまでいくつかの教授学習実験において,教授効果の評価のために,このタイプの課題が用いられている。本論文の目的は誤前提課題を用いた6つの研究の結果を概観することであった。検討の結果,誤前提課題は再生課題や転移課題よりも解決が困難であり,教授変数,特に知識の関連づけを促進する教授の効果を最も鋭敏に検出できることがわかった。上記のことから,(1)誤前提課題は,再生課題や転移課題とは異なる知識評価法として利用可能であること(2)誤前提課題に正答できた学習者は,獲得した知識を推論過程の制御に適用できる知識水準にあること(3)知識の制御的適用を促進するには,知識の相互関連性の教授が有効であることが示唆された。最後に,今後の研究や教育実践に与える寄与について論じられた。
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© 2008 日本教授学習心理学会
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