教授学習心理学研究
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児童の文学作品の謎解き読みに関する実践的検討 : 謎解き読みによる『お手紙』のアスペクトの転換
作間 慎一
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2012 年 8 巻 2 号 p. 77-87

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抄録
文学作品の理解は一般に困難である。文学作品の謎解き読みは,読者が矛盾や違和を抱く記述(謎)に作品理解の手がかりがあると考え,それらの合理的な解釈を試みることによって,すぐには気づくことのできない作品理解(アスペクトの転換)を得させるものである。読者がおかしさを感じる記述がいくつかある『お手紙』を教材として,小学4年生にそれらの謎解き読みを促す授業を行ってみた。その結果,児童は本作品の主題を「思いやりの大切さ」と当初からとらえていたが,登場人物のいくつかの行動におかしいことがあると感じていた。そこで,そうした登場人物の行動の理由についての解釈を新たに求めたところ,児童から自発的に出された解釈のほとんどが思いやりの枠組みによるものであった。今回の謎解き授業では,当初の主題理解をさらに強めることになり,本作品の謎解き読みによるアスペクトの転換が難しいことが示された。ただし,授業者が「手紙のよさ」という枠組みでの謎の解釈を提示したことによって,一部の児童ではあるが,その解釈への転換の可能性を見ることができた。
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© 2012 日本教授学習心理学会
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