質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
対話的ビブリオセラピーの体験過程の検討
対人援助職を目指す大学院生のグループから
山下 朋美
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2021 年 20 巻 1 号 p. 315-333

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抄録

本研究は,文章作品を読んだ後,ファシリテーターおよび他の参加者との対話を行う構造を持つ Interactive Biblio/ Poetry therapy(対話的ビブリオセラピー)を日本で初めて実施し,参加当事者の視点からの語りを通じて,参加 者の体験過程を明らかにし,対話的ビブリオセラピーの治療的構造と各要素の役割を説明する理論を生成するこ とを目的とした。計 5 名の対人援助職者を目指す大学院生に計 5 回の対話的ビブリオセラピーのセッションを行 い,計 2 回の半構造化面接を実施した後,内容を M–GTA によって分析した。結果,対話的ビブリオセラピーの 体験過程として計 31 個の概念と計 5 個のサブカテゴリー,計 9 個のカテゴリーが生成された。対話的ビブリオセ ラピーの体験における中心的解釈として「3 つの内と外との往還を繰り返しながら多面的な気づきが進展する過 程」が明らかになった。総合考察では【対話的ビブリオセラピーの構造】として 3 つの内と外の世界の往還と多 面的な気づき,対話的ビブリオセラピーについてのナラティブ,外部の人の侵入の捉えられ方について論じ,【対 話的ビブリオセラピーの各要素】として読む機能,メタファー,書く機能,対話の機能,グループポエムの機能 を検討した。本研究では,今後,日本で対話的ビブリオセラピーを導入することの意義を明確化し,多様な実用 の可能性を提示する一助を担った。

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© 2021 日本質的心理学会
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