質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
保育の記録におけるF–SOAIP 援用の有用性の検討
中村 聖子上田 敏丈
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2021 年 20 巻 Special 号 p. S22-S28

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抄録

本研究では,保育の記録に,医療・福祉領域で活用実績のある項目形式の経過記録法「F–SOAIP」を援用し,保育記録への有用性を検討した。本研究により,保育の記録にF–SOAIP を援用する有用性として,①項目による書きやすさ・教えやすさ,②実践の変化につながる「保育の循環的な過程」の意識化,③意図や願いを共有するという記録の意義の再認識,の3 点が明らかになった。F–SOAIP の援用は,スモールステップによる書きやすさや視覚的なわかりやすさにより,保育者の負担感を軽減していた。さらに,保育記録が,保育の循環的な過程を生成することへの保育者の理解を助け,実践への意識と行動の変容につながっていた。さらに保育者がお互いに意図や願いを理解したり尊重したりするためにも記録に意義があると認識するようになり,同僚性や職員全体の組織としての専門性を高めることへの貢献が期待できた。

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© 2021 日本質的心理学会
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