質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
大規模災害からの復旧戦略検討における 「タイムライン・メディエーション」手法の開発
松原 悠矢守 克也
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2021 年 20 巻 Special 号 p. S51-S58

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抄録

筆者らは,愛知県において行政機関や企業の関係者らとともに,南海トラフ地震発生時の復旧戦略の事前検討を 行ってきた。大規模災害の発生から72 時間は救急救命活動にとって非常に重要な時期として知られている。一方, 72 時間以降に関しては,いつごろ・どのような活動を実施すべきかという「発災からのタイムライン」について の社会的な合意が存在していない。この相違はあるべき復旧戦略についての見解の相違としてあらわれ,実際に 災害が発生した場合に深刻なコンフリクトにつながる可能性を有する。災害が発生する事前の段階で「発災から のタイムライン」に関するコンフリクトをマネジメントできる「タイムライン・メディエーション」の手法が求 められる。筆者らは,他者の視点への気づきを促す災害ワークショップ手法である「クロスロード」を原型とし つつ,試行を通じた改善を実施することで有効な手法(手法名:タイムラインズ)を開発した。本手法の活用に より,大規模災害からの復旧戦略に関する事前検討プロセスの改善を実現することが可能である。

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© 2021 日本質的心理学会
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