質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
日本語学習者の日本社会におけるネットワークの形成と アイデンティティの構築
八木 真奈美
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2004 年 3 巻 1 号 p. 157-172

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抄録

日本に滞在する「定住外国人」は平成14 年度で日本の総人口の1.4%を占めるまでになり,それに伴う日本語学習者の増加と多様化が言われて久しい。「留学生」や「就学生」は特定の日本語教育機関で日本語を学ぶことになるが、「日本人配偶者」や「定住者」などの多くは,いわゆる地域の日本語教室で学ぶ,あるいは生活の中で学ぶというのが現状である。そこで,学習者が日本語を使って生活しているネットワークが注目されるようになったが,従来の研究は教師側の視点で学習や習得に焦点をあてることが多かった。本研究では学習者側の意味付けを明らかにするために日本人配偶者となった韓国人女性に協力を依頼し,彼女のネットワークとアイデンティティの関係を分析した。データから,協力者とその夫には社会的に不公平な力関係が存在し,協力者は家庭での日本語使用に困難を感じていたが,一方家庭以外のネットワークでは,自分自身を表し冗談を言うことができた。彼女にとって第二言語を使うことは,彼女が参加したいコミュニティや個人との関係の中で自分の居場所を獲得し,他者とのインターアクションを通して「自分」を表現していくことなのではないかと考えられた。

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© 2004 日本質的心理学会
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