質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
対話的場所モデル
多様な場所と時間をむすぶクロノトポス・モデル
やまだ ようこ山田 千積
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2009 年 8 巻 1 号 p. 25-42

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抄録

質的研究の課題は,ローカルで一回的という「現場」の特徴を重視しながら,複数の「現場」に共通する一般化可能な「知」をどのように生成するかにある。本論では,「場所」モデルを基本にして,ナラティヴと多声的対話概念を関連づけた多様なモデル構成によって,その課題に応えようとする。「場所」モデルは,自己や他者を「個人」という独立概念ではなく,「場所」に埋め込まれた文脈依存的概念で考えるところに特徴がある。「ナラティヴ場所」対話モデルは,場所に含まれる人間の相互行為に着目するもので,1)入れ子モデル,2)二者対話モデル,3)三者対話モデル,4)多声対話モデルの 4 種類を提示する。「異場所と異時間」対話モデルは,文化的文脈と歴史的・時間的変化の両方を視野に入れるもので,5)場所間対話モデル,6)人生の年輪モデル,7)クロノトポス・モデルの 3 種類を提示する。これらのモデルは次のような特徴をもつ。理論枠組を単純化することによって,ローカルな現場の多様な現実にあわせて具象化しやすくできる。複数のモデルを使うことで,研究目的に応じて多種のモデルを組み合わせることができる。モデル間を有機的に関係づけることによって,モデルの生成的変形を発展させることができる。

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© 2009 日本質的心理学会
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