第四紀研究
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原著論文
阿蘇カルデラ東方域のテフラ累層における最近約3万年間の植物珪酸体分析
宮縁 育夫杉山 真二
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2006 年 45 巻 1 号 p. 15-28

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抄録

阿蘇カルデラ東方域に位置するテフラ断面において, 土壌層の各種分析と植物珪酸体分析を行い, 最近約3万年間の植生変遷について検討した. 土壌層の産状, 植物珪酸体総数・組成の変化から, 調査断面は下位よりZone 3 (32~30cal ka), Zone 2 (30~13.5cal ka), Zone 1 (13.5cal ka以降) の3帯に区分された. Zone 3の時期には, ササ属 (おもにミヤコザサ節) を主体とする草原が発達していたが, 最終氷期最寒冷期にあたるZone 2の時期には, 火山活動の活発化もあり, 草原植生は衰退傾向にあった. また, 完新世のZone 1の時期は一貫してススキ属が優占する草原が継続しており, これには人為による火入れが関与していた可能性が示唆された. さらに阿蘇火山周辺域では, 母材供給速度が大きいときには褐色土層が, 小さいときには黒ボク土層が形成されており, その境界となるテフラ噴出率は0.1~0.2km3/kyの間にあると推定された.

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© 2006 日本第四紀学会
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