第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
「汽水域における完新世の古環境変動―自然環境の変遷と人為改変による環境変化―」 特集号
霞ヶ浦の湖岸・沿岸帯における人為的要因による環境変化
平井 幸弘
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 45 巻 5 号 p. 333-345

詳細
抄録

本稿では, さまざまな人為的影響の大きい霞ヶ浦を対象とし, とくに湖岸・沿岸帯での地形改変および水位管理に注目して, 地形学的視点から過去約50年間の環境変化について検討した.
霞ヶ浦の湖岸では, 干拓によって湖岸線の総延長や肢節量が減少し, 堤防の「沖出し」によって抽水植物群落地が失われ, それ以降無植生となった箇所が多い. 沿岸に連続して発達していた湖棚地形は, 航路掘削, 揚排水機場の建設とその沖合の浚渫によって, 深さ1.5~3m, 幅約50mの溝状凹地で分断された. また, 湖底での砂利採取によって湖棚の一部が破壊され, 湖底平原にも深さ約10mに達する凹地が出現した. 霞ヶ浦の湖水位はかつて冬季から春先にかけて低下し, 夏季から秋口にかけて上昇するという季節変化が見られたが, 常陸川水門による水位管理が開始された1975年以降, 年平均湖水位は上昇し, かつての季節変化はなくなり, 1年を通じて安定するようになった.
このような人為的な地形改変および水位管理の結果, 湖岸での波浪エネルギーの増大によって, 砂浜や植生帯の侵食が進む一方, 湖棚沖合では漂砂の移動限界水深より水深が増大したために, 堆積物が移動せず, 砂州地形が形成・維持されなくなったと考えられる.

著者関連情報
© 2006 日本第四紀学会
前の記事 次の記事
feedback
Top