京都府北部の阿蘇海において採取された柱状試料ASC2 (長さ4m) とAso4-2 (長さ1.6m) について底生有孔虫化石を検討し, 過去1,200年間の阿蘇海の古環境変遷を考察した. これらの柱状試料下部 (約380cal BP以前) では, 内湾環境と季節的な貧酸素状態にある汽水環境が, 2回にわたり交替した. 一方, これらの柱状試料上部 (約380cal BP以降) では, 現在のように閉塞的な潟湖のほぼ恒常的な貧酸素状態が発達し, 何度か溶存酸素レベルの一時的な上昇がみられた. これらの柱状試料上部における潟湖底層付近の溶存酸素レベルの一時的な上昇は, 暴風雨による砂州 (天橋立) の決壊と, それに伴う湖口の形成に対応している可能性が高い.