抄録
北海道胆振海岸東部において,津波災害の履歴を知るために津波堆積物の調査を行った.その結果,地層中に17世紀のイベント堆積物が挟在することが明らかになった.この砂質堆積物は泥炭層に上下を挟まれ,海岸線に沿って平行に分布し,層厚は数cmで海側から陸側へ次第に薄くなって消滅する.内陸側へ約1~2kmの範囲まで分布し,最高で現標高8mの地点まで分布する.粒度組成は,海側では砂質,陸側では泥質になる.層厚は,局所的な地形の起伏にコントロールされ,凹地で厚く堆積している.さらに,海~汽水生の珪藻化石が含まれており,珪藻化石全体に占める海~汽水生の割合は,海側で高く陸側で低くなる.これらの特徴は,このイベント堆積物が津波によって形成されたことを示している.この津波のトリガーは不明だが,今後さらに検討される必要がある.