第四紀研究
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「瀬戸内海の変遷—自然,環境,人」特集号
大阪湾における過去150年間の環境変化 : 微化石群集から読み解く富栄養化の歴史
辻本 彰安原 盛明山崎 秀夫廣瀬 孝太郎吉川 周作
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2008 年 47 巻 4 号 p. 273-285

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抄録

大阪湾の現生底生有孔虫の分布を,TOC・TN・TS濃度などの底質項目と比較検討し,富栄養・貧酸素環境の指標(Ab-Espp index)を抽出した.大阪湾の柱状堆積物中に認められる底生有孔虫化石群集のAb-Espp indexを調べ,大阪湾における過去150年間の底生有孔虫・貝形虫化石記録との比較を行い,過去150年間の富栄養化過程を解明した.
20世紀初頭以降の都市化に伴う富栄養化の進行は,大阪湾の柱状堆積物中に認められる底生有孔虫・貝形虫に克明に記録されている.20世紀初頭以降の富栄養化に伴って,Ab-Espp indexは急激に増加し,底層水の貧酸素が頻繁に発生した1970年代にピークを迎え,栄養塩類の排出規制が進んだ1980年以降は減少傾向を示した.一方,貝形虫の個体数は20世紀初頭以降急激に減少している.このような記録は,環境変遷と人間活動との関係を長期的かつ連続的に解読するために重要である.

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© 2008 日本第四紀学会
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