2008 年 47 巻 5 号 p. 329-338
琵琶湖西岸に沿って分布している古琵琶湖層群に挟在する白土谷火山灰層は,新たに得られたジルコンのフィッション・トラック年代と火山ガラス・斜方輝石・角閃石の屈折率に基づいて,約1 Maの広域テフラである猪牟田ピンク(Ss-Pnk)テフラに対比された.この火山灰層の安定な初生残留磁化は,岩石磁気実験によって,偏平で層理面に平行な異方的配列を示すチタノマグネタイトが担うことが明らかになった.白土谷火山灰層とそれに対比される大阪層群のピンク火山灰層の古地磁気偏角は地域による大きなばらつきを持ち,垂直軸周りの回転運動が生じたことを示唆している.それは,活断層近傍の変形あるいは近畿地方を通過する新潟—神戸構造線(NKTL)周辺の右横ずれせん断を反映しているのかもしれない.