第四紀研究
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短報
瀬戸内海中部・出崎海岸(岡山県玉野市)における埋没泥炭層の再検討—特に完新世中期の相対的海水準変動との関係について—
佐藤 裕司鈴木 茂之松下 まり子百原 新植田 弥生加藤 茂弘前田 保夫
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2011 年 50 巻 1 号 p. 61-69

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抄録

瀬戸内海中部・出崎海岸(岡山県玉野市)の埋没泥炭層について,その堆積環境を再検討し,完新世の相対的海水準変動との関係を考察した.泥炭層は,完新世中期のおもに約7,000~6,600 cal BPの間に,塩性湿地で形成された.この時期は,瀬戸内海沿岸域における完新世の相対的高海水準期に相当し,泥炭層は約7,000 cal BPに海水準上昇が鈍化する一方で,当該地域に及んだ海進に伴って形成されはじめた.泥炭層は高潮位面と最高潮位面との間で形成されたと考えられ,当時の潮位差が現在と同程度であったとすれば,泥炭層形成期間中の約400年間に相対的海水準は0.27~1.27 m以上(妥当な最大値は0.5~0.7 m)上昇し,約6,700~6,600 cal BPに最高位まで達したと推定される.調査地域における局地的な沈降量を考慮しても,この間の海水準上昇はユースタティックな要因によると考えられる.

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© 2011 日本第四紀学会
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