第四紀研究
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2009年度日本第四紀学会賞受賞記念論文
旧石器時代の人類活動と自然環境
小野 昭
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2011 年 50 巻 2 号 p. 85-94

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抄録

人類活動と自然環境の関係は,絵合わせのように並列させて語るのは簡単であるが,相互関係の実体を分析し,その影響関係や規定関係を解明するのは容易でない.マクロな環境一般と人類遺物との関係を問題にすることは無意味であり,人類の働きかけが可能な,いわゆる有効環境の領域を分析することの重要性を指摘した.時代の枠を旧石器時代にとり,広がりの対象はヨーロッパを中心としたユーラシアに設定した.気候の寒暖の変動と動物相,植物相と道具の素材,石・骨・木の道具素材の組み合わせの展開から,人類活動と自然環境の規定関係と非規定関係を議論した.具体的にはゾウなどの大形動物の骨素材を利用しつつも,素材の形態と骨の緻密質の厚さに規定されない“溝切り技法”の成立を例にとり,人類の活動と自然環境の関係を立体的に理解する方法を提起した.

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© 2011 日本第四紀学会
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